(週刊朝日2022年1月21日号より)
(週刊朝日2022年1月21日号より)

 同じく休校になったことで、現役予備校講師たちが中心となって立ち上がったチャンネルが「ただよび」だ。

 英語の安武内ひろしや現代文の出口汪、古文の吉野敬介など、予備校業界を代表するベテラン講師の授業がYouTubeで誰でも見られるのが特徴だ。文系と理系科目でチャンネルが分かれ、一つひとつの動画も15分程度の単元別に再生できる。教材も「ただよび」のホームページで無償公開されており、スマートフォンでどこでも受講することができる。

 ただし、すべての動画が無償というわけではなく、応用問題や過去問解説といったレベルの一部のものは、月額制となる。ただ、それでも月1980円に抑えられており、大学受験をしたくてもお金がない人を意識した作りになっている。

 とはいえ、大学受験対策だけでも100チャンネル以上あり、何を参考にすればいいのか、どうすればうまく使いこなせるのかという問題が付きまとう。その解決策として小林氏は、「質問代わりに使う」ことをアドバイスする。

「YouTube上で知りたい情報を検索すれば、断片的な情報でもそれを解説した動画が出てきますので、学校や塾の授業でわからない点をその場で調べることが可能です。これまでは学校や塾の教師になんとなく質問して、当たっているかわからないまま情報をうのみにするしかありませんでした。ところが、受験生や保護者がスマホ一つで検索することで、わざわざ学校や塾に行って質問に時間を割くことなく、簡単に答えにたどり着けるようになったことは大きいと思います」

 YouTube上で動画が氾濫していることを逆手に、学校や塾での不明点を洗い出し、自分で何が知りたいのかを明確にした上で視聴するのがポイントのようだ。

 一方で、これらのチャンネルの中には予備校の授業顔負けの動画もある。既存の予備校や塾が淘汰される流れはないのだろうか。

 こうした疑問に、小林氏は首を横に振る。

「その流れは今のところないと思います。結局、超大物講師がYouTube動画を出しまくるという結果にはなっていませんし、仮に動画があっても受験生自ら勉強をしなければ意味がありません。実は今の受験業界は、授業を売るよりも管理やモチベーション維持、コーチングといった方向に動いています。ですので、基本は学校や塾の指導を受けながら、参考書やYouTube動画などのコンテンツを使って学習していくスタイルがこれから一般的になると思います」

 参考書だけでなく、YouTubeの動画も教材の選択肢に入るようになったことは大きい。残り短い期間、受験生にはぜひ頑張ってほしい。(河嶌太郎)

週刊朝日  2022年1月21日号

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