(c)2021, LETTERBOX FILMPRODUKTION, SUDWESTRUNDFUNK
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──AIであるという点を常に意識して演技しましたか?

「監督のマリアからは、ロマンチックコメディーの古典的作品といえるような、ジェームズ・スチュワートやケーリー・グラント主演の映画なんかを演技の参考にしてほしいと言われた。特にケーリー・グラントの演技は、時にはロボット的と形容できるような演技だったりして……。彼の素振りや表情などにインスピレーションを得て演技したのは楽しかった。今作にはふさわしい選択だったと思う」

──今作はAIが魂の伴侶になり得るかというコンセプトについて、問いかけています。あなた自身、人類にとってAIはどんな役割を果たすと考えていますか?

「それは大きな課題だね。ソフトウェアのエンジニアが答えるのにふさわしい質問かもしれない。僕は単なる俳優でしかないし。この映画の中で提案される点といえば、アルマはどちらかというとAIに他の人よりもずっと懐疑的だ。私の理想の恋人というチェックリストを作り、そこに人間らしさという項目があったとしたら、トムの場合要件を満たすのか。そうであれば完璧な恋人であるのか? また同時に人にとっての理想の恋人像は固定できず常に変わるものだ、という点も指摘している。それに対応するにはAIはかなり高度に洗練されていなければならない。人類の進化とともにAIも進化していく必要があると思う」

──日本では高齢者施設などでコミュニケーションロボットの導入も始まっています。ただ、見た目は全く人間とは違うんですが。

「日本の高齢者施設でロボットが活用されているという話を聞いて、一層日本に興味がわくし、行ってみたいと思う。この映画は、遠い未来や現実とかけ離れた物語ではない。日常はほとんど現在と同じような設定で、違うのはただトムのような存在がいるかどうか、という点だけだ。これまで制作されたAIの映画は、未来的または終末的な視点のものが多いが、今作ではトムがある日突然、人類を殺す、というような危機は起こらない。テーマはシンプルで、『(人間のアルマとAIのトムの)二人は共存できるか』にあるんだ。その点ではAI映画の中では、異例と言えるかもしれない」

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