独特の世界観で映画界にもファンの多いウェス・アンダーソン作品。新作「フレンチ・ディスパッチ」の出演はフランシス・マクドーマンド、エイドリアン・ブロディ、ティルダ・スウィントンなどアカデミー賞獲得者、マーレイほか、いつものウェス作品常連組がずらり。
時は20世紀。フランスの架空の街にある「フレンチ・ディスパッチ」誌の編集部。米国新聞社の支社が発行する雑誌で、アメリカ生まれの名物編集長(ビル・マーレイ)が集めた一癖も二癖もある才能豊かな記者たちが東奔西走し、活躍している。国際問題からアート、ファッション、美食に至るまで深く切り込んだ唯一無二の記事で、50カ国50万人の購読者を獲得している人気雑誌だ。
ところが、編集長が仕事中に心臓まひで急死してしまう。雑誌は彼の遺言によって廃刊を迎えることになる。果たして何が飛び出すかわからない、編集長の追悼号にして最終号の、思いがけないほどおかしく、意外なほど泣ける、その全貌とは──。
本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
ポップな映像表現で語られる特集記事の内容、それを書く知的で変な人たち。連打されるエピソードをつなぐのは洗練されてお洒落でどこかメランコリックでもある編集者魂。これがアンダーソン監督映画の世界でもある。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
「ニューヨーカー」誌とフランス文化への愛着から生まれた監督の突拍子もない構想を、細部まで見事に形にしてしまう美術部の大仕事が凄い。多様なスタイルを駆使して、超豪華なキャストから個性を引き出す演出もさすが。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★
毎度のキャストで安定のアンダーソン監督の世界観。ファンにはたまらない。私には相変わらず合わない。いつもどの画角も切り取りたいほどカラフルでカッコいいけど、それだけ。でもこのスタイルを貫き通すのがスゴイ!
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★
主演級の俳優を惜しみなく使っていて、創意工夫に富んだ演出や美術もとても楽しめる。だからこそ、この監督特有の箱庭のような演出が窮屈めいてしまうのも感じた。以前の作品にあったロケを多用した次作を期待したい。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2022年2月4日号