林:ひ、ひどい!

森永:日本に帰ってきたのは小学校6年生のときでした。でも、日本語はろくにしゃべれないし、習慣が違いすぎてなじめませんでした。たとえば、アメリカでは、わからないことがあったとき、意見があるときに黙っているのはよくないことで、いじめの対象になるくらいです。でも、日本の学校の授業で同じようにふるまったら、それがいじめの対象になってしまった。それで、半分引きこもりみたいになっちゃって。そうやって苦しんでいる私を心配して、ウィーンに住んでいたころから、親が毎日のようにミニカーを買ってくれたので、それがコレクションを始めるベースになったんです。

林:森永さんはいろんな体験をなさったにもかかわらず、都立高校から東大に進学されたんですよね。私が知ってる人でも、日本の教育になじめずに、海外に進学された方が何人もいますけど。

森永:運がよかったんです。帰国したばかりの小学6年生のときは、成績がクラスでビリでした。でも、中学の授業はまた一から始まったので、何とかなったんです。

林:すぐトップの成績に?

森永:クラスではすぐに一番になりましたね。でも、歴史などの社会科は積み重ねが必要なので、なかなか信じてもらえないんですけど、私が徳川家康の存在を知ったのは大学に入ってからなんです。

林:えっ!

森永:東大入試の直前模試で、日本史の偏差値が28、世界史が33だったんですよ。さすがにあせって、試験の2日前にやっぱり変えようと思って、受験当日は日本史と世界史から、政治経済と地理に受験科目を変えたんです。だから私、社会科は試験の前日、1日しか勉強してないんです。

林:それで東大に入ったって、かなりイヤミだなあ……(笑)。

森永:自己採点ですけど、地理はたぶん満点です。当時はまだ問題が洗練されてなかったんですよ。

林:というと?

森永:当時、マークシートというか、多肢選択だと、まったく知らない問題でも私は7、8割の正答率があったんですよ。出題者の気持ちになって考えるんです。選択肢をつくる人は、正解を知っているわけですよ。どういう思考回路でハズレの選択肢をつくるのかを考えると、おそらく正解から派生している。正解の逆だったり裏だったり並びだったり。そういう視点でずっと過去問を見ていくと、見た瞬間に正解がわかるんです。

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