元東京都知事で、作家の石原慎太郎氏が亡くなった。89歳だった。石原氏の自民党時代からの盟友といえば、亀井静香氏。2人は原発への考え方は対極的だった。故人を偲び、週刊朝日に2015年に掲載された2人の大激論を再度お届けする。
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亀井:日本は今や欧米に劣らない国になった。ただ、科学技術を含め、文明を制御できなくなってその反逆を受けている。
石原:原発のこと?
亀井:うん。しかし、原発問題だけではない。地球が危機に瀕している。世界中の人は今、他を排除しても自らの利益をつかもうとしている。けれど、人間はそれをある程度、制御しながら自然や他と共存する努力をしようという気持ちを本来、持っていた。それが失われた今、大地震、噴火などの天変地異が続き、自然から反逆を受けている。
石原:我欲のせいだよ。亀ちゃんもたまにはいいこと言うな。
亀井:慎太郎先生が大好きな原発についても同じことが言える。放射能は放射線治療に役立つが、使い方によっては人間を破滅させる力を持っている。
石原:人間が作ったものを人間はコントロールできないのかね? 21世紀に入って日本人が科学分野でとったノーベル賞の数は欧州各国を上回っている。だから僕は、日本人の知恵で制御し、克服できると思っている。
亀井:いや、できない。私の姉は、広島に原爆が落ちた後、援助のための学徒動員で市内に通い続け、二次被曝の被害に苦しんだ末に1986年に亡くなった。「白血球 測る晩夏の 乾きかな」という句を遺してね。東日本大震災で福島の原発は、広島に落とされた原爆とは比べものにならないほどの放射能をまき散らしたわけだから、これからが心配だ。
石原:放射能汚染が怖いのは、チェルノブイリの時もそうだが、次々世代まで影響が出ることだな。
亀井:ぜひ慎太郎先生に、作れるのなら新しいものを作ってもらいたいが、その前に、いつ大地震がくるかわからない。私が運輸相だった時、阪神・淡路大震災があった。当時も地震学者の誰もが大地震を想定せず、日本列島はなまずが目を覚まして大騒ぎになった。地震大国なので原発は考え直したほうがいい。
石原:具体的にどうする?