監督・脚本 ジャスティン・チョン/11日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/118分 (c)2021 Focus Features, LLC.
監督・脚本 ジャスティン・チョン/11日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/118分 (c)2021 Focus Features, LLC.
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 2021年のカンヌ国際映画祭に出品され、上映後8分にも及ぶスタンディングオベーションで大喝采を浴びた「ブルー・バイユー」。監督・脚本・主演のチョンの評価も高く、妻を演じたアカデミー賞女優ヴィキャンデルの演技も絶賛された。

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 韓国で生まれ、3歳のときに養子としてアメリカに連れてこられたアントニオ(ジャスティン・チョン)は、シングルマザーのキャシー(アリシア・ヴィキャンデル)と結婚し、貧しいながらもささやかな幸せに満ちた暮らしをしていた。あるとき、些細なことで警官とトラブルを起こし逮捕されたアントニオは、自身が知る由もない30年以上前の養父母による書類手続きの不備で移民局へと連行され、国外追放の命令を受けてしまう。

 下手をすると強制送還されて二度と戻れない危機に瀕し、2人は異議を申し立てようとするが、費用が5千ドル以上かかるとわかり、途方に暮れてしまう。家族と決して離れたくないアントニオは、ある決心をするが──。

監督・脚本 ジャスティン・チョン/11日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/118分 (c)2021 Focus Features, LLC.
監督・脚本 ジャスティン・チョン/11日からTOHOシネマズ シャンテほか全国公開/118分 (c)2021 Focus Features, LLC.

本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)

■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
差別や無情な役所に押しつぶされそうになりながら、家族のために必死で生きる男が悲しい。自分では何もできなかったに違いない暗い過去。実の父親以上になついてくれた幼い娘への愛。ヴィキャンデルの歌が胸に沁みた。

■大場正明(映画評論家)
評価:★★★
アジア系の移民や養子の現実に迫る脚本、リアリティーを追求するスタイルが切り拓く世界にぐいぐい引き込まれる。抑制された演出がドラマを引き締めていたのに、終盤で極端に饒舌な語り口に変わるのがもったいなかった。

■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★★
もちろん養子制度を考えないといけないけれど、それだけの映画ではない。様々な家族がいます。様々な人間もいます。経験したことで人柄ができあがって、誰かを愛するあまり失敗もある。完璧な人はいない。泣きすぎた。

■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★
アイデンティティーとして同じルーツの「ミナリ」と共通の古典的なストーリーテリングを含むが、古典的なメロドラマへの回帰が評価の分かれ目だろう。感情の高まる箇所に自然光を取り込む撮影と子役の感情表現が見事。

(構成/長沢明[+code])

週刊朝日  2022年2月11日号