
一方で、「ずっと遊んでいたい」という気持ちもある。
「映画監督っていうのは、大人じゃないとダメだと思うんです。でも、僕自身はまだ遊ぶこと=分解のほうが好きだから。台本を自分の中に入れるときもそう。何回も繰り返し読みながら、頭の中でバラバラに分解しちゃう。リズムを変えたり、役柄のエモーショナルな部分を分解していって、入れ替えたり、どこかをブツッと切ってみたり。そんなことをずーっと繰り返すのが楽しいですね。話の内容なんて一回読んだらわかるんだから、自分が役をどういうふうにパフォーマンスするかを考えて、いろいろシミュレーションを繰り返してみる。僕流の“分解”をわかりやすくいうと、そういうことになりますね。頭とか手とか、何か動かすことが僕にとっての“遊び”だから、基本、せっかちなんだと思います」
趣味は釣り。分解癖とは程遠い趣味のように思えるが。
「いやいや、釣りって、せっかちな人じゃないとダメなんですよ。僕はフライフィッシングで、毛鉤も自分で作るんで常に忙しいですが、餌釣りにしても、浮きに反応がなくなったら、反応のない理由を見つけないと次につながらない。気の長い人だと、餌を取られたことにも気付かずに、延々と待っていられるじゃないですか。それじゃ釣れないです(笑)」
(菊地陽子、構成/長沢明)
國村隼(くにむら・じゅん)/1955年生まれ。大阪府出身。81年「ガキ帝国」で映画デビュー。国内外の映画を中心に、ドラマ、舞台、ナレーションなど幅広く活躍。初主演作「萌の朱雀」が第50回カンヌ国際映画祭カメラ・ドールを受賞。ナ・ホンジン監督「哭声/コクソン」(2016年)で、第37回青龍映画賞の男優助演賞と人気スター賞の2冠に輝き、同賞での外国人俳優初の快挙となり、注目を集めた。
※週刊朝日 2022年2月11日号