林:「カメラを止めるな!」(17年)みたいに、インディーズっぽいのが突然ヒットする世の中ですから、これもひょっとして……。

宮崎:「カメラを止めるな!」は若い監督の希望の星ですよね。そういうことがありますからね。

林:昔は助監督を経て監督になったわけですけど、いまはそんな制度がないし、いろいろお金を集めて撮っていくわけですよね。今回の奨学金みたいに。

宮崎:育てていくというシステムがないですもんね。だからチャンスを生かさないと。本作は、コロナの感染拡大が原因で、21年に公開できなくなってしまったんです。だから、待って待ってようやくなんですよ。上映の順番待ちをしている作品がたくさんあって、その間、監督はどうされてたんだろうと思ってました。次の作品が撮れてたかもしれないし。

林:昔、森田芳光さんが「家族ゲーム」(83年)を撮って、小さい映画だったのに評判が評判を呼びましたけど、あれもふつうの一家に奇妙な男の人が入り込んで崩壊していくんですよね。

宮崎:そうでしたね。

林:一家への入り方とか崩壊の仕方が、「家族ゲーム」はまだわかりやすかったけど、これはお母さんの意志によって入っていくわけですから難しいですよね。でもこれ、小劇場が好きな人にはウケるかもしれない。

宮崎:そうかもしれないですね。不思議な味わいがあります。私はいい体験でした。これが本だったら、どんなふうに評価されるんでしょう、林先生。

林:これ、純文学の世界だから、私、わからないけど、自分の文体で綴ってるから、ハマる人にはすごくハマると思いますよ。

宮崎:そうか、これ、純文学なんですよね。

(構成/本誌・唐澤俊介 編集協力/一木俊雄)

週刊朝日  2022年8月12日号より抜粋

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