林:お優しいですね(笑)。
宮崎:そんなことないですよ(笑)。監督がどこかに「アリの生活を上から見るような視点」って書いてましたけど、不思議でしたねえ。観察されてる感じ。カメラ、ずっと回しっぱなしなんですよ。セリフ、とうに言い終わってるはずなのに「カット」が入らないから、セリフを自分で勝手につくって言ったりして、「どうするんだろうな」っていう(笑)。
林:映画自体、かなり難解であることはたしかですね。
宮崎:監督の脳内世界があらわれている、という感じですね。白い世界から色とりどりの世界に自分で染めていくとか、閉じこもってる世界と外の世界をどう切り結んでいくのかが現代人のテーマだとか、いろいろ言えますけど、結局は「何だろう」という感じで。撮影に入ってから、じわじわと監督の意図がわかったような気もしますけど、いまだに自信はないですね。
林:監督自身が元ニートなんですってね?
宮崎:そうなんですよ。閉じこもってたみたいで。
林:これはPFF(ぴあフィルムフェスティバル)でグランプリをとった小松監督が、PFFスカラシップを獲得して実現した作品だから、低予算でつくられてるんですよね。
宮崎:撮影期間も限られてたし。
林:何日ぐらいで撮ったんですか。
宮崎:10日ぐらいかな。飯能(埼玉県)の一軒家を借りて。たとえば「このシーン、晴れの状態で撮りたいな」と思っても、お金が潤沢にあったら晴れるまで待てるわけですけど、それができないから気の毒な感じがしました。じっくり撮りたかったんだろうなと思うんです。
林:宮崎さんみたいな方が、こういう若い人の意気を感じて「一肌脱いであげよう」という感じだったんですか。
宮崎:小松監督の受賞作の「食卓」(2016年)を見たときに、変におもしろくて、なんか魅力的だったんですよ。何がどう魅力的かというのは難しいんだけど、独特の世界で、いままで見たことのないタイプの映画だったので、そこにちょっとひかれましたね。