もう一人、忘れないのが92歳で逝った加島祥造さんです。長野県の伊那谷に住んで「伊那谷の老子」と呼ばれた英文学者です。加島さんは、とにかく女性にもてます。亡くなる前、20歳以上若い女性と付き合っていました。結婚することになって、そのために家の改造も始めたのです。ところが彼女が病で急死しました。さぞかし、加島さんは落ち込んでいるだろうと心配しました。命が縮まるかもしれないと思ったほどです。
ところが違いました。しばらくして、また新しく若い女性と付き合いだしたのです。亡くなる時に面倒を見たのはその彼女です。私も病室でお会いしましたが、仲睦まじさは普通ではありませんでした。加島さんのこの部分は、とても私には見習えそうにありません。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2022年8月12日号