そんな甲田さんは職場の人たちとスキーに行くようになり「若い連中と遊ぶならスノボもやってみるかな」くらいの気持ちで55歳からスノボを始めた。
「スキーも我流でやっていましたが、スノボも見よう見まねで、初心者用の本やレッスンマニュアルやDVDを買って、練習を始めました。それでも若い連中とコツコツ練習していて、そこそこ上手くなっていた。そんな時、2011年、SAJスノーボードデモンストレーターの河合美保さんと、たまたま、リフトで一緒になって、“この子、いつもカッコよく滑っているな”と思って、声をかけたんです。彼女もいつもいるおじさんだってわかっていたみたいで。“いつも滑っていらっしゃいますよね。一度、バッジテスト(スノーボードの滑走レベルをチェックする技術認定テスト)を受けたらいかがですか?”と言われました。それで、そのシーズンにバッチテストを受けました」
そこから、甲田さんの“進化”が始まる――。
「技術的に勉強していこうと思って、地元のゲレンデにある菅平パインビークスノーボードスクールでレッスンを受けながら、バッジテスト2級、1級を受けて、C級インストラクターの資格を取った。遊びじゃなくて、自分のための練習しようと思いました。スノボは遊びに行くという感覚は全くなくて、ひたすら練習です。菅平パインビークスノーボードスクール(長野県上田市)に出会えたのは良かったですね」
甲田さんは自身のYouTubeで華麗なスノボのカービングを披露しているが、「古い動画を見られるのは屈辱的」と言う。その動画を見てみると、雪面をまるでなでるかのようなカービングの滑走は、とても70代とは思えない。一体、なぜ屈辱的?
「2年前の滑りは恥ずかしくて見せられない(笑)。コツコツ、コツコツ練習していけば、今年よりも来年のほうが上手い、来年より再来年のほうが上手いんですよ。80歳になった時の滑りのほうが、72歳の今の滑りよりも上だろうなと思います。本当ですよ! 72歳というと、若い人からすると“あぁ~年寄り”って思われますけど、全然違いますよ! ちゃんと伸びしろがあるんですよ。今シーズンは雪質が良くて、コロナ禍のためにゲレンデに人がいなくて、練習するには最高のシーズンで、めっちゃレベルが上がっているんです」