しかし、宇髄はそんな堕姫の首をあっさりと斬り落とした。この剣技ひとつとっても、「柱」としての実力がよく分かる。
<お前上弦の鬼じゃねぇだろ 弱すぎなんだよ>(宇髄天元/10巻・第84話「大切なもの」)
■宇髄の自己評価
宇髄が戦い始めると、経験値、戦闘力、指揮力、状況判断能力が抜きんでていることが、視聴者の目にも明らかだった。しかし、妓夫太郎から「お前違うなぁ 今までに殺した柱たちと違う」「選ばれた才能だなぁ」と指摘されると、宇髄はそれを鼻で笑って、自嘲気味にこう答えた。
<この国はな 広いんだぜ 凄ェ奴らがウヨウヨしてる 得体の知れねぇ奴もいる 刀を握って二月で柱になるような奴もいる 俺が選ばれてる? ふざけんじゃねぇ>(宇髄天元/10巻・第87話「集結」)
妓夫太郎との会話の中で、宇髄がまず思い浮かべたのは、現役鬼殺隊最強の剣士である悲鳴嶼だった。そして、14歳の若さで霞柱をつとめる時透無一郎のことだ。突出した強さでは悲鳴嶼、天才の名をほしいままにしているのは時透だ。
<そう 俺は煉獄のようにはできねぇ>(宇髄天元/10巻・第87話「集結」)
さらにそんなことを心の中で呟いた宇髄は、自分が忍として育ったつらい過去と、そこから救い上げてくれた産屋敷耀哉の声を思い出していた。
遊郭で出してしまった市民の被害、身体をめぐる毒の感覚が宇髄の気持ちを一瞬だけ弱気にさせたが、相手に悟らせないために、宇髄は高らかに叫んだ。
<絶好調で天丼百杯食えるわ 派手にな!!>(宇髄天元/10巻・第87話「集結」)
そして、観察眼に優れた宇髄のハッタリは、敵の弱点を的確に指摘しており、それは鬼に対するけん制にもなった。
<そしてテメェらの倒し方はすでに俺が看破した 同時に頸を斬ることだ 二人同時にな そうだろ!!>(宇髄天元/10巻・第88話「倒し方」)
■「音の呼吸」の特性
「遊郭の鬼」の恐ろしさは、広範囲を攻撃できる点にある。堕姫の「帯」の攻撃、妓夫太郎の血鎌から繰り出される斬撃は、建物も市民も容赦なく切り刻む。