「選ばなかったみち」2月25日からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開 (c)BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE AND AP (MOLLY) LTD. 2020
「選ばなかったみち」2月25日からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開 (c)BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE AND AP (MOLLY) LTD. 2020

──ローラ・リニーが妻役、エル・ファニングが娘役、恋人役をサルマ・ハエックと共演者も豪華ですね。

「ローラが妻役を演じると聞いたとき、本当にうれしかった。彼女の大ファンで、またぜひ共演したい。サルマとは05年にカンヌ(国際映画祭)の審査員をやったとき以来の知り合いだよ。彼女は妻ペネロペ(・クルス)と仲が良いから会う機会も多くて、共演はすごく楽だった。彼女の演技は自然のパワーにあふれた雷のようだよ。それに値する演技をしなければならなかった」

──認知症患者を演じることで心がけたことは?

「リラックスし、呼吸を学び、内面の会話を学ぼうとした。自分に継続的に話しかけ、日常的なルールや常識を忘れようとした。そこから、ここにいない自分を作りあげようとした。役作りの点では、他の役と大幅に違っているとは思わない。見つけた方法がうまくいくこともあるし、いかないこともあるし」

──台詞が限られたレオの世界を表現するのは難しかったと思いますが。

「生きる意味を失い、すべてをなくした男を演じるという点が最大の挑戦だった。レオは他人を認識できず、自分が誰かもわからない、何をやっているのかも、どこにいるのかも。と同時に、外界とつながろうともがいている。それができなくても、意図は見て取れるし、痛々しい。だから逆にコネクトできたときは、美しいんだ。若年性認知症とアルツハイマー型認知症の違いは、前者の場合、30歳以上の人なら誰もがかかる可能性があるという点だよ」

──エル・ファニングとの親子役ということも、本作の最大の見どころですね。

「脚本に書かれている台詞、演技をいかに生み出すか、それが僕らにとっての課題だった。シーンごとにその方法は異なった。僕はどんな演技をするか自分でもわからないと言うと、エルは『大丈夫、何にでも対応するから』と言ってくれた。その通り、何をやっても、うまく対応してくれた。彼女は驚くべき俳優だよ。あんなに若いのに。エルほど対応力がない俳優が相手だったら、今回の僕の演技は生まれなかったと思う。彼女が支えていてくれるから、僕は自由に思い切り演技できたんだ」

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