AERA 2022年2月28日号より

 そこに今夏の参院選の推薦問題が浮上した。両党は16年の参院選から相互推薦をしてきた。改選数4の埼玉、神奈川、愛知と、改選数3の兵庫、福岡の計5選挙区で、自民党は自前の候補とは別に公明党候補を推薦。一方の公明党側は、1人区の32県などで自民党候補を推薦するという仕組みだ。

 ところが、昨年秋に岸田政権が発足した後、自民党側の推薦決定が遅れた。茂木幹事長が公明党・創価学会の組織票より無党派の若者の票を重視する方針だという情報も流れ、公明党側は不満を募らせた。公明党の山口那津男代表は自民党の対応の遅れを批判。「私たちだけが自民党を推薦することが国民に理解してもらえるか」と語り、自民党からの推薦が固まらない以上、一方的な自民党候補への推薦はあり得ないとの考えを示した。

 公明党の実動部隊である創価学会も、いらだちを隠さない。1月27日には異例の声明を発表。16年、19年の参院選の1人区などで自民党候補を推薦してきたが、今回は「人物本位」で投票する方針を明確にしたのだ。声明では「公人としてふさわしい人格や見識を備えた人」を支援するとしている。要するに、自民党が5選挙区で公明党候補の支援を明確にしないなら、公明党・創価学会も1人区などで自民党候補を推せないという考え方を明確にしたのだ。

■河井候補を推す対価

 とりわけ、公明党が重視しているのが、改選数3の兵庫だ。16年の選挙で公明党候補は自民党候補に次いで2位につけた。19年の参院選で公明党・創価学会は、当時の安倍首相と菅官房長官の要請にこたえる形で、広島選挙区(改選数2)で自民党の河井案里候補を全面支援。河井候補は当選し、自民党の現職だった溝手顕正候補は落選した。その後、河井陣営の大規模な買収事件が発覚。河井参院議員は辞職に追い込まれ、支援した公明党も批判にさらされた。

 当時、公明党が河井候補を推す「対価」として自民党に求めたのが、兵庫選挙区での公明党候補への支援だった。菅官房長官が公明党の要請にこたえて、兵庫入り。公明党候補をてこ入れした。激戦の末、公明党候補は維新の候補に次いで2位。自民党候補は3位に滑り込んだ。

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