アーセナル時代のメスト・エジル(写真/gettyimages)
アーセナル時代のメスト・エジル(写真/gettyimages)
この記事の写真をすべて見る

 現在のサッカー界において“絶滅危惧種”と言われているのが「ファンタジスタ」である。

【写真】日本で最も「ファンタジスタ」の素養がある選手は

 かつてはロベルト・バッジョを筆頭に、デル・ピエロ、トッティ、ルイ・コスタ、ジダン、ロナウジーニョなど、テクニックと創造性に優れたプレイヤーたちが芸術的なラストパスやアイデアあふれるプレーで攻撃を司った時代があったが、時間とスペースが限られた現代サッカーの中で彼らは自由を奪われ、出番と役割を失っていった。だが、決してファンタジスタが絶滅した訳ではない。

 近年、最も成功したと言える現役のファンタジスタが、メスト・エジル(ドイツ)だろう。愛称「オズの魔法使い」。左足の繊細なボールタッチから正確無比なキックと小気味の良いドリブルで攻撃にアクセントを加え、類稀なパスセンスで観衆を魅了。シャルケのユースから2006年にトップデビューを果たし、ブレーメンからレアル・マドリードへとステップアップを果たすと、スペインでの3年間でリーグ戦105試合19得点54アシストを記録した。ドイツ代表でも10番を背負い、W杯に3度(2010、14、18年)、EUROに2度(2012、16年)出場。2013年からはアーセナルで7年半に渡ってプレーし、天才的な“ひらめき”を発動しながら攻撃を彩った。2021年1月からトルコのフェネルバフチェでプレー。現在33歳、監督との確執や衰えなどが指摘されてはいるが、その能力は誰もが認めるところである。

 続いて名前を挙げたいのが、ハメス・ロドリゲスだ。コロンビア代表で10番を背負い、22歳で出場した2014年のW杯でセンセーショナルな活躍を見せ、大会後にレアル・マドリードへ移籍。精度と威力を兼ね備えた左足を持ち、広い視野と懐の深いキープから鋭いラストパスと美しい軌道のクロスを繰り出した。ゴールゲッターとしても非凡な才能を持っていたが、レアル・マドリードでは適正のトップ下のポジションがなく、戦術的にフィットせず。運動量の少なさが指摘され、ベンチを温める不遇の時代を過ごした。その後、バイエルン・ミュンヘンやエバートンでは能力の高さを示したが、30歳となった直後の2021年9月にカタールのアル・ラーヤンへの移籍し、キャリアの凋落ぶりが話題となってしまった。

次のページ
現代のファンタジスタは短命?