週刊朝日と同じ大正生まれ、100年を超えて愛され続ける名店を紹介。その矜持も味わいたい。
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◆蓬莱屋 小津監督が愛した日本最初のヒレカツ
薄い衣に包まれた弾力のあるヒレ肉の旨味(うまみ)が、口中に広がっていく。グルメの小津安二郎監督が、足繁く通ったというのも納得の味だ。
大正3(1914)年に開業したが、「最初はなかなかうまくいかず、肉屋から安い肉としてヒレを回してもらったんです」(スタッフの山岡良有さん)。蓬莱屋こそ、ヒレ肉を初めて揚げた店なのである。
今では当たり前になった二度揚げという手法も、この店から始まった。
住所:東京都台東区上野3‐28‐5/営業時間:11:30~13:30L.O.(土日祝は~14:00L.O.) 17:00~19:30L.O./定休日:水
◆大多福 大阪と東京双方のいいとこ取りおでん
東京のおでんにしては、汁の色が薄い。しっかりと味はついているのだが……。創業者は大阪出身。大正4年に上京し開業した。
「初代は大阪の味のままでは駄目だと、薄口醤油を使って味をつけたんです」(4代目店主の舩大工安行さん)
おでん種も東西のいいとこ取り。関東らしくハンペン、魚スジ、ちくわぶがあれば、関西風に湯葉、鯨もある。
大根は2~3日、別鍋でゆっくり火を通してから、おでん鍋に移される。必食だ。
住所:東京都台東区千束1‐6‐2 NS言問ビル1F/営業時間:16:00~20:00酒類L.O./定休日:月
◆はち巻岡田 ゴロリとした鮟肝に作家・山口瞳も舌鼓
開業は大正5年。頑固で無口な初代は常に豆絞りの鉢巻きをしており、いつしかそれが屋号となった。
食材の質にこだわり、「芝海老が良くない年は揚げしんじょを出すのをやめました。近年は秋刀魚を出していません」と言う3代目・岡田幸造さんも、語り口調こそ穏やかだが、妥協を許さぬ職人肌。
多くの作家に愛されてきた。特に山口瞳氏は、夏は鰹の中落ち、冬は鮟鱇鍋を食べて季節を感じていたという。
住所:東京都中央区銀座3‐7‐21/営業時間: 17:00~20:00酒類L.O./定休日: 日・祝
*営業時間はまん延防止等重点措置適用中のもの。詳しくはお店にお問い合わせください
(取材・文/本誌・菊地武顕)
※週刊朝日 2022年3月11日号