改めて今、政治の中心に立つ顔ぶれを見ていると、そこは、日本の国会なみに男性が圧倒的多数の世界なのだと気がつかされる。2015年、ミンスク合意を成立させた立役者のメルケルさんの不在は大きい。中年男性と老人男性しかいない世界の真ん中のたけだけしさから排除されている声を、どうしたら聞けるだろう。18歳から60歳の男に対しては国境が閉ざされ、武器を持てと国から命令される現実は恐怖でしかなく、「国を守る」とは人を殺せ、自分を犠牲にしろ、ということなのかと途方にくれるが、空から爆弾が降ってくるような日常に、もはや選択肢はない。インスタグラムでは、元ミス・ウクライナの女性がミリタリールックで銃を持つ姿を公開して称賛されているが、悪夢のようなジョークにしか思えない。でも、ではどうすれば。
分かっているのは、日常が奪われるのは一瞬だということだ。だからこそ、勇ましい声がこれ以上大きくならないように、これ以上、命と生活が奪われないためにロシアの隣国としての日本に生きる市民ができることは何かを考えたい。唯一の被爆国であり、世界最大の原発事故を起こした国として、そして先の戦争で国家の暴走を止められなかった国として、発信できることは何か。アメリカの追従や世界を分断させるマッチョな声をこれ以上育てないために。
3月8日は国際女性デーだ。女性運動の根源に、平和を求める意思がある。その声の力を信じたい。
■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表