加藤容崇(かとう・やすたか)/ 日本サウナ学会代表理事・慶應義塾大学医学部特任助教。
加藤容崇(かとう・やすたか)/ 日本サウナ学会代表理事・慶應義塾大学医学部特任助教。

 集中モードの脳の状態CENは、雑念のない瞑想(めいそう)状態と同じで、脳のエネルギー消費も5%程度。いわばCENは脳の省エネ運転状態で、負荷が少なく脳が休まる。脳の疲労がとれるのだという。それに対して、DMNは通常モードの雑念の多い脳の状態だ。脳は常にごちゃごちゃと思考し続けており、体を休めているときでも脳は疲れたままになりやすい。DMN状態では脳のエネルギー消費も70~80%におよぶ。

「自動的に脳の状態がCENに切り替わるサウナは、手軽なウェルビーイング装置。実際に瞑想をするとなると難しいテクニックの習熟が必要だったりしますが、サウナはそうしたテクニックも不要でマインドフルネスに近い体験ができてしまう特殊な空間といえます」

 サウナでは、高温のサウナから低温の水風呂、外気浴と、体は温度差の大きい環境にさらされる。強い負荷をかけられ、自動的に副交感神経、交感神経に交互にスイッチングされるという。

「サウナから水風呂に入ると、交感神経が優位になり、アドレナリンやノルアドレナリンなどのホルモン(興奮物質)が出ます。水風呂を出ると速やかに副交感神経優位となり、体はリラックスへと向かいますが、2分間ぐらいはまだ興奮物質が残っている状態。高揚感があり、頭がスッキリ覚醒したまま、体はリラックス状態になる。これがいわゆる『ととのう』という状態です」

 ととのった状態の脳波をMEGという超高精度の脳波計を使って解析すると、アルファ波やベータ波に顕著な変化が見られ、とくにデルタ波は下がって覚醒度が上がっているという。

「サウナ後のととのった状態では脳は深くリラックスしていますが、眠気はなくスッキリしていて、かつクリエーティブな発想が生まれやすい状態といえます」

 サウナによって脳疲労がとれ、仕事や勉強などの集中力も増し、効率もアップする。また、サウナ後しばらくは、「深部体温が高く皮膚表面の温度が低い」状態にあるため、眠りに最適な身体状態となっており、夜の睡眠の質も上がる。

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