東日本大震災の発生時刻に合わせて黙とうする人たち(2018年)。本文の内容とは関係ありません。
東日本大震災の発生時刻に合わせて黙とうする人たち(2018年)。本文の内容とは関係ありません。

 東日本大震災から11年がたった。これだけの月日が経過してもなお、震災後の避難生活など環境の変化によって命を落とした「災害関連死」はいまだ実数がつかみにくい。ノンフィクションライターの山川徹さんは、残された遺族らの声に約10年に渡って耳を傾け、その記録を『最期の声 ドキュメント災害関連死』(KADOKAWA)にまとめた。「被災者にとっては、発生後からが、本当の災害の始まりだ」と語る山川さんに、震災関連死に目を向けた思いを聞いた。

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 山川さんが災害関連死を取材するきっかけは、被災地で起きた少年の死だった。

「3・11からしばらくして、10代の少年が津波で亡くなった家族の骨壺を抱いて海に飛び込んだ、というウワサを耳にしました。現地に行って周囲に話を聞きましたが、真相はわからなかった。家族の死に思い悩んで自死したのか、全く違う理由だったのか、または足を滑らせたのか……。なぜ、大震災を生き残った少年が死ななければならなかったのか。この死は検証されるべきだったのではないかと、とても胸が詰まる思いでした」

 災害関連死は、自治体に災害弔慰金の申請をして認められなければ、数としてもカウントされない。山川さんが調べると、少年の親族は、申請をしていないことがわかった。いまも少年の死は、災害とは無関係の死としてあつかわれている。こうして震災と直接的な関連がないとみなされた死は、人知れず闇に葬られていく。

「自然災害により、大切な人や日常を奪われ、喪失感や絶望を抱えながら、心身の健康が少しずつむしばまれていく人は少なくありません。でも、的確な支援を得られていたら、救えた命も多かったはずです。災害関連死は、支援やサポートが不十分だったケースと考えることもできるんです」

 復興庁が2021年12月末にまとめた東日本大震災の関連死は、1都9県で3784人だった(同年9月30日時点)。

 その人たちは、いかにして亡くなったのか。災害関連死は、その経緯をたどり、検証することで、次に来るであろう災害への教訓としていかされるはずだ。それは、亡くなった人が残した「最期の声」として記録する意義がある、と山川さんは言う。

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「震災さえなければ、あんな死に方はしなかったはず」