ノンフィクションライターの山川徹さん(画像=本人提供)
ノンフィクションライターの山川徹さん(画像=本人提供)

「『災害ユートピア』という言葉あるように、災害直後には人々の結束が一時的に強まるものです。そこで率先して、周囲の人のために一生懸命に頑張ろうとする人もいます。ただ、初めは気持ちが盛り上がっているのですが、慣れない環境下で無理をしていた結果、後になって心身に影響が出てしまう。震災後、数週間から数カ月後に急性くも膜下出血や心筋梗塞などで亡くなったケースも取材しました」

 そうした事態が起こった場合の、自治体の対応も十分とはいえない。遺族が災害関連死と認めてもらおうと自治体に災害弔慰金を申請すると、窓口の職員からは「関連死ではないと思いますよ」と言い切られたり、災害関連死を認定する審査委員会での議論時間が驚くほど少ないことなどが、明らかになった。また、地域による認定率に偏りがあることもわかった。

「日本弁護士連合会が2013年に公表した資料によると、被災3県の福島、宮城、岩手において、災害と因果関係のある死であるかを判断する審議は、1件当たり平均7.2分という短さでした。岩手は平均4.3分とさらにひどい。議事録すらなかったり、すでに記録を廃棄したりした自治体もある。実態はあまりにも杜撰でした。多くの自治体で、遺族感情とはかけ離れた対応がなされていたのです」

 わずか数分の審査で災害との「関連性なし」と判定されてしまう家族の死……遺族は胸をえぐられるような思いであったに違いない。

「遺族は、実際に親族が苦しんでいた姿を近くで見てきたわけです。関連性がないとされても、震災さえなければ、あんな死に方はしなかったはずだ、と思えてしまう。守ることができなかったのは自分のせいだという後悔に駆られてしまう遺族は少なくありません」

 震災後に降りかかってくる被災者遺族たちの苦悩。こうした当事者の思いを聞いてきた山川さんは、最後にこう語る。

「災害関連死をひもとくことは、災害大国の日本で生き抜くために必要な手掛かりであり、次の災害による犠牲者を救う手段につながると信じています」

(AERA dot.編集部 岩下明日香)