自分にとって何が大切で、どんな治療を受け、治療後どう過ごしたいか。言葉にすることが気持ちの整理の助けになるだろう
自分にとって何が大切で、どんな治療を受け、治療後どう過ごしたいか。言葉にすることが気持ちの整理の助けになるだろう

■医師と患者が対話しながら、目標と行程を決めていく

「SDMは医師も患者も、どの選択肢がいいのかわからないときの意思決定の方法です。医師はいま利用できる最善のエビデンスを共有し、患者から状況や希望などを聞き取り、双方向でコミュニケーションを取りながら、目指す目標と、そこに近づく方法を一緒に探していきます」(中山医師)

 現代の医療の場においてSDMは重要だが、常におこなう必要があるわけではない。確実性が高い治療が一つに絞られる場合は、医師がその選択肢を提示し、患者が納得できれば治療法が決まる。これは一般的な「インフォームド・コンセント」の流れだ。

■判断することが負担になるなら、無理にしなくてもいい

 また、患者が希望しない場合は、SDMをおこなうべきではないと、中山医師は指摘する。

「どうしたいかが明確でない人もいます。皆が自ら意思決定をしたいわけではないので、判断をすることが負担になる人も。“患者が医療を決める時代”になったといわれますが、誰にでも判断を押し付けるのは間違っています」

 終末期医療については「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」という方法もある。これは、将来の変化に備えて、患者の人生観や価値観、希望に沿った将来の医療やケアについて、患者を主体として、家族や医療・ケアチームが繰り返し話し合いをおこない、患者の意思決定を支援するプロセスだ。

 病気や終末期に向き合うことは容易ではないが、この企画を締めくくるにあたり、上記のようなワークシートをまとめた。自分の気持ちを整理する助けになればと願う。

(文/伊波達也)

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より