ロシア軍によるウクライナへの侵攻が始まってから、約2週間が経過した。この間に原発への攻撃や小児病院への空爆など、想像の範ちゅうを超える出来事が次々と起きている。そんな中、気になるのはそうした軍事行動の決裁を担うプーチン大統領の精神状態だ。米紙ワシントン・ポストは、バイデン米政権が米情報機関に対し、プーチン大統領の精神分析を最優先課題として指示していると報じている。はたしてプーチン氏は、正常な判断ができる状態なのだろうか。精神科医に話を聞いた。
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YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」で独裁者の精神状態について解説している早稲田メンタルクリニックの益田裕介院長は、前提として、直接診察していない人物の精神状態について言及するのは避けるべきとする「ゴールドウォーター・ルール」の事情を挙げ、「あくまでも一般論になりますが」としたうえで、こう話す。
「一般的に、独裁者は孤独な状況に陥りがちです。トップである以上、周囲に同じ立場の人間がいません。特定の分野に精通する参謀がいても、すべての分野に詳しい専門家はいないので、トータルで考えて判断する立場は自分一人なのです。また、周囲がイエスマンばかりになれば、都合のよい情報しか寄せられず、本音の部分でのやりとりはなくなりますし、いくら話し合っても十分な共感は生まれません。クリニックでは、経営者など強いリーダーシップを発揮しなければならない立場の方を診察することがありますが、彼らは強いプレッシャーにさらされ続けるので、精神的な疲労を抱えている人は多いです」
独裁者は一人で多くの決断を下す立場上、その決断に全責任を負う立場となる。小さな組織のワンマン型のリーダーも同様だが、一国のトップともなれば、人命に関わる判断も一手に担ううえ、利害で敵対する存在も増える。当然ながら、日々強いストレスとプレッシャーにさらされる。
全米の精神科医たちによる告発書『ドナルド・トランプの危険な兆候――精神科医たちは敢えて告発する』(岩波書店)では、歴代大統領の多くは重い精神疾患や身体疾患を罹患し、「1776年から1974年までの37人の米国大統領のうち、49%が精神障害の診断基準を満たしていた」という記述もある。
そんな為政者たちは、プレッシャーをどのように乗り越えていくのか。益田院長は次のように話す。