ロシアのプーチン大統領(GettyImages)
ロシアのプーチン大統領(GettyImages)

「そのまま疲弊していく場合もありますが、不安を解消するために、『自分は他よりも優れている』と思い込んでナルシシズムの強化を必要とするパターンの人もいます。ナルシシズムが強化されれば、組織が抱える問題の解決よりも、自身の決断を守ることにエネルギーを注ぐようになる傾向があります」

 また、為政者たちの人格は一定ではなく、常に変容しうる。長期政権で高ストレスの状況が続けば、プレッシャーに適応するために脳の構造が変容し、行動自体も変わっていく可能性があるという。時に、ゆがんだパーソナリティーに変わり果ててしまうことも。

「人間なら誰しも、立場や状況に応じて性格は変わります。独裁政権ではトップダウンで迅速に物事を進められるというメリットがある半面、トップの心身の状態に大きく左右されてしまうので危険な側面もあります。就任時にはカリスマでも、人間である以上、優れた状態を維持することはできません」(益田院長)

 加齢による変化も避けられない。プーチン大統領は69歳と、他国の為政者たちと比べて取り立てて高齢というわけではないが、長期で実権を担えば脳の疲労やストレスの蓄積に起因する鬱やアルツハイマーのリスクを抱えやすくなるという。

「歳を重ねれば集中力や記憶力は低下しますし、一度に多くのことを考えたり、新たなことに対して柔軟に考えたりするのが苦手になります。恒例行事のような変化が少ない問題であれば、経験のある年長者のほうが有利ですが、今の世の中はめまぐるしいスピードで変化していますから、変化に疎くなれば対応を見誤ってしまうこともある。平均寿命が上がるにつれて、今後は世界中で高齢の為政者が増えていくでしょうから、そうしたリスクは軽視できないと思います。もし、死ぬ間際だから最後にやりたかった戦争を起こそうとやけを起こしてしまう為政者が現れれば、巻き込まれるほうは悲惨です。その意味でも、高齢者ばかりに一極集中してしまう政治システムを見直すべき時期に差し掛かっていると思います」

 また、英メディアがパーキンソン病を患っていると報じるなど、プーチン大統領の体調面での不安要素も指摘されている。

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「相手の裏をかく必要性」