3月24日に全世界独占配信が開始されるNetflix映画「桜のような僕の恋人」でカメラマン見習いを演じる中島健人さん。気持ちが入ったという作品と役作りについて語った。AERA 2022年3月21日号から。
【写真】蜷川実花が撮った!AERA表紙を美しく飾った中島健人
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――映画「桜のような僕の恋人」は、若い世代を中心に大ベストセラーとなった宇山佳佑の恋愛小説が原作だ。人の何十倍もの速さで老いていく難病に侵された美咲と、彼女に影響されて成長していくカメラマン見習いの晴人。二人の切ない物語を、中島健人と松本穂香が情感たっぷりに紡いでいく。まず驚くのは、晴人を演じた中島のアイドルオーラのなさだ。役作りのために、忙しい合間を縫って撮影スタジオでカメラマンのアシスタントを経験したという。
中島:この作品には、とても気持ちが入っていました。
役としての時間を撮影外でも過ごしてみたかったんです。そもそも自分を向上させてくれる作品に出合いたくて出かけた書店でこの本に巡り合い、大ファンになりました。その実写化に携わることができて、運命のようなものを感じていました。できるだけ準備をして、本番になるとその準備を忘れるという作業をやりたかった。Netflix映画という時間をかけて役を追求できる環境も大きかったと思います。
晴人とずっと地続き
でも、宿命なのか、なぜか映画の撮影と全国ツアーがかぶるんですよ。いつも役との切り替えが大変になるんですが、今回はその切り替えもしたくなかった。というか、もうできなかった。だから、ずっと晴人と地続きのような時間を過ごしていました。普段の僕はふざけたいしジョークも言うのが好きなんだけど、晴人はローテンション。ずっと静かに過ごしていたら、スタッフさんに「雰囲気がいつもより暗いね」と言われました(笑)。ステージ上ではアイドルじゃなきゃいけないから、それはショックでしたね。それぐらい日々、晴人でした。
――なにより、初タッグとなる深川栄洋監督とのセッションが、自身を新境地へと導いてくれたと感じている。忘れられないのは笑顔の練習をさせられたこと。完全無欠のアイドル、ケンティーが笑顔の練習とは衝撃的だ。
中島:撮影中、監督に「君は見せる笑顔をしてる」と言われたんです。「本当の笑顔はそんなことを感じさせない。そこが課題だね」って。笑顔が難しいなんて、意識したこともなかった。監督は優しくて静かな雰囲気の方だけど、ドSなんですよ。全然OKが出ないし、冷静にじわじわと僕の芝居の癖を指摘するし。ただ、厳しい中でも「カット」のあと近寄ってきて、「最高でした」と囁(ささや)かれると「気持ちいい……」と思っちゃう。監督によって、俺、ドMにされたのは間違いないです(笑)。今まで自分が経験してきたトラウマや悲しいことも全部、監督に話しました。そうしないと深川監督と深くつながれないと思ったのかな。僕、結構、壁を作って取り繕っちゃうタイプだったんです。お芝居にそれはいらなかったんだなと気づかせてくれました。