3月17日未明、停電のため手信号で交通整理をする警察官ら/東京都武蔵野市
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 3月16日深夜、宮城、福島両県で震度6強を観測する地震が起き、広範囲で被害が出た。AERA3月28日号では、今回の地震を緊急取材。首都圏でも発生した「停電」について専門家に聞いた。

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 今回の地震の影響は、首都圏にも広く及んだ。

 地震発生時に料理中だったという、東京都内に住む30代女性はこう振り返る。

「電気が消えたと思ったら、大きな揺れがきてすごく怖かった。ベランダに出たら、周りも真っ暗で不気味でした」

 女性の住むマンションは全体が停電し、エレベーターも動かなかった。17日午前1時過ぎには復旧したが、不安でなかなか寝付けなかったという。

 東京電力によると、東京都約70万軒、神奈川県約31万軒、埼玉県約30万軒、千葉県約22万軒など、管内での最大停電数は約210万軒に上った。

 首都圏で観測された震度は主に3~4。震源の福島県沖から遠く離れているのに、なぜ停電が相次いだのか。

 東京電力パワーグリッドによると、地震によって福島県にある広野火力発電所の5号機と6号機など、東電管内の発電所4カ所が稼働停止。発電量と電力使用量のバランスを取る「周波数低下リレー」が作動したという。

 同社担当者はこう説明する。

「大規模な地震が発生した際は、機械の故障や事故防止のために発電所は自動で停止します。それによって電気の需給バランスが崩れるため、電気を意図的に止めて停電範囲を最小限に抑える仕組みになっています」

 この停電によって、首都圏ではエレベーターに閉じ込められたり、オートロックのマンションから閉め出されたりしたという人も出た。電力が完全に復旧したのは、地震発生から約3時間半後の17日午前2時52分だった。

 大規模な地震によって、停電が起きたのは今回だけではない。2021年2月に福島県沖で発生し、宮城、福島両県で震度6強を観測した地震でも、首都圏や東北などで93万戸が停電。このときも、周波数低下リレーが作動した。

 大きな地震が起きたとき、電力を守る手立てはないのか。担当者は言う。

「停電を210万軒発生させてしまったので、申し訳なく思っています。ただ、ゼロにすることは、おそらく難しい。本来はもっと停電範囲が広かったものを、周波数低下リレーによって抑え込んでいます。発電事業者の設備対策もありますし、送電においても地震で絶対に壊れない電柱を作れるのかといった技術的な問題があります」

(編集部・福井しほ)

AERA 2022年3月28日号

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