週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは「肝がん治療」の解説を紹介する。
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肝臓は人体で最も大きな臓器で、内部には肝動脈、多臓器をめぐった静脈血が流れ込む門脈、胆汁が流れる胆管が分布している。
原発性肝がんのほとんどは、肝臓の細胞から発生する。慢性肝炎や肝硬変(C型肝炎などウイルス性のものを含む)を経るケースが多いが、最近では、多量飲酒しない人に起こる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)から肝がんに至るケースも増える傾向にある。
いずれにしても、肝がんは肝機能が低下した状態を素地に発生している。そのため治療法を検討する際は、肝機能がどの程度保たれているか(肝予備能)がポイントになる。ほかにも、肝臓外への転移があるか、門脈などにがんが広がっているか、がんの個数や大きさなどによって治療法が違ってくる。
■治療後5年以内で8割近くが再発する
肝がんの治療法は複数あり、肝機能やがんの状態に応じ「肝癌診療ガイドライン」において推奨される治療法から選択する。
肝障害度が低く、肝臓外への転移や血管などへの広がりがなく、3センチ以内のがんが1~3個の場合、手術またはアブレーション治療が推奨されている。がんが1~3個で3センチ超の場合は、手術または肝動脈を詰まらせる塞栓(カテーテル)療法、4個以上の場合は、カテーテル療法または薬物療法が選択肢になる。
肝がんには、再発しやすいという特徴もある。治療後5年以内で8割近くが再発するといわれている。また、再発の多くは、肝臓内である。再発した場合は、そのつど治療法を検討して治療を受ける。長くつきあうつもりで治療後には定期的に検査を受けることが大切である。