「がんは、心・肺疾患や老衰などに比べて、ある時期から急速に弱っていくのが特徴です。昨日までできていたことが今日からできなくなる――という変化が突然くる。この変化が始まると、“いままでと同じ生活”を送るのは困難です。この“変化”までの貴重な時間を有意義に過ごすためにも、患者さんやご家族には、がんという病気の進み方や変化についての知識をもってほしい」
緩和ケアに大切なことは何か。高橋医師はこう語る。
「緩和ケアの使命は、『その人がその人らしく生きていけるようにお手伝いすること』です。痛みをとることはそのための手段に過ぎません。痛みがある間はもてなかった希望や目標が痛みをとることで見えてきて、それに向けて頑張る気力がわくこともあるのです」
木澤医師が付け加える。
「痛みをゼロにはできなくても、8~9割はどうにかできる。何より“いまよりいい状態”にはできる。少なくとも患者さんの生活の役に立ちたいと思っているし、そのために努力することは約束します」
十数年前は整備途上だった緩和ケアという領域。それがいまは進歩し、有効活用できる時代を迎えつつあるといえよう。
(文/長田昭二)
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より