「いつウクライナ侵攻が終わるのか」と皆に聞かれます。でも、これに終わりはありません。今、起きていることは「新冷戦(ニューコールドウォー)」です。1989年のドイツ・ベルリンの壁崩壊によって私たちが得てきた平和の配当金は、もう消えたのです。
核の脅威が目の前に
そして、世界が理解しなければならないのは、冷戦時代のソ連は、今よりずっと危険度が低かったこと。当時のソ連は、アフリカや南米、中東やアジアに対する影響力はなかった。しかし今のロシアは、ガセネタに満ちたサイバー攻撃によって、冷戦に勝る熱戦(ホットウォー)(武器による戦争)をできる技術を持っています。
さらに、核の脅威があります。キューバ危機以来、核の脅威はなかったのに、今や目の前にあります。私たちは、核兵器が使われる可能性があるということを認識し、それを最小化するために何とか管理しなければなりません。ロシアと米国という2大核保有国が、直接対決の可能性があるという事実、それが今や想定外ではないことを正直に認めざるを得ません。
北大西洋条約機構(NATO)加盟について、ゼレンスキー大統領が「加盟国になることはないだろう」とカナダ議会下院の演説で言及しました。これは、ウクライナ市民にとってはニュースではありません。彼は、公式の場ではっきりと以前に発言すべきでしたが、民間人の犠牲が多く出ている今、言及せざるを得なかったのでしょう。
最後に、中国メディアは、ウクライナで何が起きているかは何も報じていません。こうした中、ロシアが中国に対し軍事的支援を要請したという情報が、米ホワイトハウスからリークされました。中国にとって面白くないでしょう。おそらく、バイデン米大統領と習近平中国国家主席の会談が開かれるはずです。こうしたことも、新しい環境が生んでいる事象です。
(構成・ジャーナリスト津山恵子(ニューヨーク))
※AERA 2022年3月28日号