
「日本の金融機関や事業会社の間では、これからロシア向け投資や債権の減損処理が活発化することでしょう。BIS(国際決済銀行)の統計によれば、日本のロシア向け債権残高は96億ドル(約1兆1300億円)になります。しかしロシアは、国内から撤退する外資の現地法人を国有化するなどの措置を検討しており、日本企業の損失がもっと大幅に膨らむ恐れもあります」(武部氏)
日本企業がロシアで受けた痛手は、4月下旬から本格化する2022年3月期決算発表で、具体的な数字となって明らかとなる。内容次第では、株式市場にショックが走りそうだ。また1998年のロシア経済危機のように、ルーブル急落などでヘッジファンドが大損を抱えている可能性を指摘する専門家もいる。武部氏はこう述べる。
「他の海外資産を処分して円に戻し、ロシアの赤字を補填(ほてん)する日本企業も出てきそうです。世界的にはドル回帰(有事のドル買い)が続くものの、こうした円買い需要が一時的な円高に結びつくかもしれません」
(金融ジャーナリスト・大西洋平)
※AERA 2022年3月28日号