台湾の蔡英文総統
台湾の蔡英文総統

 今回も同様の認識を示した。

 そして、環太平洋パートナーシップ(TPP)の枠組みをさらに拡大させた環太平洋連携に関する包括的および先進的な協定(CPTPP・TPP11)台湾と中国が加盟を申請していることについてこう支援を求めた。

「台湾と日本は手を携えてインド太平洋地域の経済をより繁栄させていくことができます。そのため台湾がCPTPPへ加盟できるよう日本のご支援を強く期待します」

 安倍氏もこう歓迎の意を示した。

「CPTTPは私が総理であった時に合意、発効したものです。台湾が協定の原則を受け入れ、そしてまた協定の高い水準を満たすことで早期に加入が実現することを強く期待します」

 安倍氏と蔡英文総統というサプライズ対談に反応し、強烈な不快感を示したのは中国だ。

「安倍氏は台湾独立勢力と結託している。台湾問題に口出しすべきではない」

「中国と台湾の問題をウクライナ情勢と同レベルで扱うことは危険だ」

 前出の自民党国会議員はこう話す。

「これまで安倍氏は台湾と親密な関係を築いてきた。昨年6月、コロナワクチンを台湾に提供した時も安倍氏と蔡英文総統のホットラインだった。それがさらに太いパイプだと印象付けた。ロシアのプーチン大統領と親しいことが売りだった安倍氏。ロシアのウクライナ侵攻で評判を落としていたので、思い切った方針転換をしたのではないか」

 産経新聞元台北支局長で東海大学非常勤講師の吉村剛史氏はこう語る。

「このタイミングでのオンライン対談は用意周到といえます。ウクライナ情勢に注目が集まり、台湾有事にもより関心がもたれている時に日本の元首相と台湾の現職総統の直接対談は、より大きな反響となる。中国にもプレッシャーになりますよ。それに中国はロシア支援とみられがちだが、軍事面ではウクライナとも非常に緊密な関係です。双方に顔を立てないといけない悩ましい時に、台湾有事を出されると、そちらの火消しにも走らねばならない。安倍氏と蔡英文総統の作戦勝ちですね」

(今西憲之)

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