かつては地上波が主流だったプロ野球中継も、近年はCS放送やネットなどの普及で、どの試合もリアルタイムで視聴でき、見逃し配信も楽しめるようになった。
この記事の写真をすべて見るこれだけ中継網が充実すると、時にはチーム内の喧嘩をはじめ、当事者にとって「映してほしくない」ハプニングシーンが期せずして映ってしまうこともある。
エースとコーチが試合中にあわや殴り合いという緊迫の瞬間が映し出されたのが、2007年8月23日の楽天vsロッテだ。
楽天の先発・岩隈久志は、1対0とリードした4回、味方のエラーから崩れ、一挙3失点。無念の思いでベンチに下がり、5回から有銘兼久にマウンドを譲った。
事件が起きたのは、2点を追う楽天の7回表の攻撃が無得点に終わった直後だった。
ベンチ内で岩隈と野村克則育成コーチが激しい口論となり、掴み合い寸前で、山田勝彦バッテリーコーチが体を張って制止。さらに橋上秀樹ヘッドコーチや紀藤真琴投手コーチら数人も駆けつけ、両者の間に入って引き離す騒ぎとなった。
岩隈は興奮気味に何事か吐き捨て、野村コーチも不快な表情をあらわにしてベンチのイスに座った。
試合後、野村コーチの父・野村克也監督は「何を言っていたかわからないが、怒られるようなことをしたんだろ。ロッカーで遊んでいたんだろ」と息子を全面擁護し、岩隈を非難した。
ロッカー云々発言は、岩隈が4回の降板後から7回途中までロッカーに籠りっきりで、携帯電話で会話にふけっていた行動を指していた。
堀越高の先輩でもある野村コーチが「中継ぎ投手が投げているのだから、しっかり試合を見ないといけない」と注意したところ、岩隈が反発して口論になったとみられる。
実は、ロッカーに籠っていたのは、当時3歳の長女が発熱したため、心配して自宅に連絡していたのが理由だったといわれる。
だが、同年の岩隈は、開幕投手を務めながら、故障で二度にわたって戦線離脱するなど、エースの信頼に応えることができず、この日まで1勝2敗。野村監督も「あいつは痛い、痛いばかり言っている」とボヤくなど、風当たりのきついときに、誤解を招くような行動を取ったことが、一層立場を悪くしたと言える。
そんなチーム内のぎくしゃくした空気が一瞬のうちに暴露されてしまうのも、テレビの怖さである。