Snow Manの主演映画「おそ松さん」が3月25日に公開、30日にはその主題歌「ブラザービート」が発売され、いずれも好スタートを切っている。映画で6つ子の長男・おそ松を演じる向井康二が、そのストーリーと重ねながら、自身との共通点や人生の転機について、笑いを随所に盛り込みつつ語ってくれた。AERA 2022年3月28日号の記事を紹介する。
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「もう、おれ、惚れてたもん」
向井康二の口から、聞き捨てならない言葉が飛び出した。
赤塚不二夫の名作ギャグ漫画『おそ松くん』。成長してニートとなった6つ子を描いたアニメ「おそ松さん」が制作され、人気を博したのは2015年のこと。この3月、Snow Man主演で実写映画化され話題を呼んでいるのだが、とりわけ向井のファンにとっては心がざわめくであろう作品だ。その理由のひとつが、向井が演じる長男・おそ松の恋愛シーン。
「恋愛シーンというかラブモードね。ほんまに入り込んじゃってやばかった。芝居にノセられたっていうか。ちゃんと役に入ってたから、いい顔してるかもね。いちばん楽しかったもん!」
いい笑顔で語るや、「でも、安心してや。役としてやから。終わってから何もないで(笑)」とファンへのフォローは忘れない。
ちなみに、作中のおそ松の恋は同じ本を取ろうとして手が触れあったことで始まる。同じ状況で恋に落ちる可能性は?
「ひゃくぱーやね! あんなシチュエーションやったらもう100%。惚れやすいからね!」
おそ松は恋に落ちたことで変わっていくが、自身にもそういう面はあるかと尋ねると、「恋したら? 正直、あんま変わらんけど……一目惚れやろ? まあやっぱり、ニヤニヤするんじゃない?」とニヤニヤした。「街で偶然恋をして、名前も知らないってのがいちばんいいよな。探してくの。あのコ、どこにおんのやろ、って(笑)」
そんなロマンチストな向井が、もしもSnow Manのメンバーと恋に落ちるとしたら?
「え、誰やろな? まあ、自分やね!(笑)。自分以外? 意外におれ、ふっかさんか、しょっぴー」
深澤辰哉や渡辺翔太との仲を知るファンにとっては意外性はないだろうと指摘すると、「いや、ふっかさん狙う人、おらんくない? ビジュアル的に!(笑)」といつもどおり深澤をいじってから、「まあ、いつも一緒におるし。だては友達みたいな感じやから」と続けた。宮舘涼太と二人との違いは、面倒を見たくなるところ? 「ま、それはあるな。あとは、なんていうか……テンション感が一緒なんよ、毎日。それがいい。楽かも。波がない」
■心は24歳、Snow Manでは“八男”
恋愛シーンだけではない。アイドルの主演作としては衝撃の強い映画でもある。配役を聞いたとき、どう感じたのだろう。
「おそ松って長男やから、まず、おれが長男でええの?って。原作を見てみたら、あ、なるほどね、って思ったけど(笑)。でも、タイトルに名前のある役やないですか。ちょっとうれしい気持ちは、もちろんあった」
実際に演じてみると、「自分とも似てるところもあるので」、楽しかったという。「なんか頼りないとことか。ま、メンバーのなかでの話よ? メンバーやったら、誰頼りにするかっていったら、岩本(照)さんとかになるやん? あとは、いじられたり、ちょっかいかけたり、子どもっぽいところは似てるかな」
おそ松は長男ながら「心は小学生」という設定だ。27歳の向井の心は何歳だろう。
「おれは24やと思っていま活動してる。目黒(蓮)のいっこ下!」
Snow Manの末っ子を自称していたこともあるが、最年少18歳のラウールよりは「上! やけど、めめよりは下」で、気持ちは“八男”だと言う。
じつは24歳という年齢を、向井は以前も口にしたことがある。
「気持ちって大事で。27で活動すると、27やん。大人になるのは30、40になってからでもいけるから、いまのうちは、まだ若くいたいわけさ。やっぱ気持ちが27になると、27なのよ。24っていうのがいいのよ。3歳っていうのがちょうどいい。あ、でも、28になっても24やからね!」
■自身の3つの転機とは
映画ではおそ松が老夫婦と出会うことによって物語が大きく展開する。いわば、6つ子にとっての転機だ。向井にとっての転機はと訊くと、即座にこう返ってきた。
「やっぱりジャニーさんに見つけてもらったのが1回目。あと、WESTがデビューしたときと、滝沢くんじゃない?」
母親の出身国タイにあるムエタイジムに飾られていた向井の写真を見た故・ジャニー喜多川氏直々のスカウトで事務所入りしたこと、滝沢秀明副社長からの誘いでSnow Manに加入したことは、広く知られている。その二つと並ぶ転機として、関西ジャニーズJr.で活動を共にすることが多かったジャニーズWESTのデビューを挙げた。
「それまではなんか安心してて。デビュー云々やなくて、やってたらどうにかなるやろ、ぐらいの感覚で。もちろん、がんばってたけどね。でもWESTがデビューして初めて、焦りが出た」
WESTには同期もいる。
「シゲ(重岡大毅)とか(藤井)流星とかね。だから、そこから仕事との向き合い方が変わった感じやね。がんばらないと大阪がなくなる、おれがやらなあかんな、みたいな。具体的に何をがんばるとかじゃないけど、気持ちの問題で。いっちょ前にね」
ちょっと茶化して笑ったものの、向井は14年からデビューまで、関西を率いるメンバーの一人だった。立場上、後輩を叱ることもあれば、反発を受けることもあったという。成長も大きかっただろうが、向井がいま屈託のない表情でメンバーに甘える姿を見ると、Snow Manという仲間に出会ったことの大きさも、改めて感じさせられる。
作中で「いい兄弟を持って幸せ」というセリフがある向井に、最近「いいメンバーを持って幸せ」だと感じたことを尋ねると、1月に新型コロナウイルスに感染し休養を余儀なくされたときのエピソードを挙げた。「照(てる)兄(岩本照)がUFOキャッチャーで、おれの好きなスパイダーマンの人形取ったよって写真送ってきたから、いいなーって返したら、いやお前のだよって。あ、そうなん?って」と破顔一笑する。「そういう気遣いとかね。あとは、やっぱかっこいいわけさ。みんなが踊ってるの、俯瞰で見てると、いいな、と思う」
少し引いて、全体を俯瞰で見るのが好きなのだと言う。「やから、じつは打ち合わせとかでもあんましゃべらんの。俯瞰で見るのって意外に大事よ」
■Snow Manの兄弟感
4月からの連続ドラマ「特捜9」にも出演する。演技の仕事が続くが、演じることはどういう存在なのだろう。
「お芝居? 新しい自分に出会う旅です……やかまし!(笑)」と照れ隠しで自分にツッコむ向井だが、挑戦してみたい役は?
「悪者(わるもん)やりたいとはずっと言ってるんやけど。汚れきった役とか。それか、ダサいんだけど、にくめない役。かっこいいのはいらん。アクションとかもしたいけどさ、笑い要素もほしいよな。……あ! 寅さんみたいなやつやりたい、いちばんは。寅さんリニューアルするとしたらやりたいもん。寅さんの遺伝子入った子どもでもいい。ニュー寅。寅くんやね。いっぱい惚れるんやけど、振られていくん。いいんじゃない? フーテンの寅くん!」
映画「おそ松さん」は公開から3日間で45万人を動員、2022年の邦画No.1スタートを切った。
「『おそ松さん』の映画を見てね、ちょっとでも笑っていただけたらうれしいなと。主題歌の『ブラザービート』も、Snow Manの兄弟感が出てるかなって。今までにない曲調で、Aメロからラップっていうのも新しい挑戦やし、普通やったら多分サビはノるだけの振りになる曲なんやけど、ちゃんと踊るっていうのが僕らっぽいのかなって」
演技も笑いも、歌もダンスも、アイドルとしてさらなる高みを見せてくれそうだ。(編集部・伏見美雪)
※AERA 2022年3月28日号