「コンビニ百里の道をゆく」は、52歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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今年も桜が見事な花を咲かせました。東京・大崎にある本社のそばには桜の名所・目黒川が流れていて、ふらっと外に出かけたくなりますね。
コロナ禍はまだ収まりませんが、3月下旬には「まん延防止等重点措置」が全面解除になりました。ご近所で花見を楽しんだ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
とはいえ、なかなか遠出をする気分にはならないようです。外食も大人数ではしづらいですし、リモートワークの普及で生活のすべてを自宅周辺で済ませることが多くなりました。それがコンビニエンスストアのビジネスモデルを大きく変えています。
コロナ禍の前までは、お客さまのピークが朝と昼の2回ありました。出勤や通学前にお店に寄ったり、ランチタイムにお弁当を買い求められたりすることが多かったからです。いまはそうしたニーズが少なくなり、夕方にピークを迎えることが増えました。混雑するスーパーを避けて、自宅近くのコンビニで夕食の材料や総菜をそろえるという生活様式が生まれたからです。
そうなると、お客さまからのご要望も増えてきます。「地元の豆腐はないの?」「あの納豆がほしい」「生鮮食品も充実させて」など。そうしたニーズにきめ細かく対応することによって、新しいコンビニの使い方が生まれています。
一方、特に都心部ではミニスーパーなどライバルがひしめいています。でも、店内キッチン「まちかど厨房」を活用したできたての弁当やサンドイッチ、そして総菜の種類や味では負けません。コロナ禍で苦労はしましたが、新しいニーズをつかむことができた。まさにピンチはチャンスです。
あとは一日も早くコロナ禍が収束して、「朝ピーク」「昼ピーク」が復活し、そして「夕ピーク」へとつなげる。そんな日常がやってくるのを、心から祈っています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2022年4月18日号