(週刊朝日2022年4月29日号より)
(週刊朝日2022年4月29日号より)

 こうした所有者不明の土地は、特に大規模災害が発生した際の迅速な復旧・復興事業など公共事業の妨げになっているとされる。そのため、国は2024年4月から相続登記を過去にさかのぼって義務化し、怠ると10万円以下の過料を科すことにした。

 法務省や国交省などがオブザーバーの所有者不明土地問題研究会は17年に報告書をまとめた。それによると、16年度の地籍調査で、登記簿上で所有者が確認できない土地は全体の2割超に達した。そこから推計した全国の所有者不明の土地は約410万ヘクタールと、九州本島の約368万ヘクタールに相当するという。地籍調査とは、主に市区町村が土地の所有者や、境界の位置、面積などを測量するもので、国土全体の5、6割まで進んでいる。

 ここでいう所有者不明の土地とは、登記名義人(土地所有者)の登記簿上の住所に調査通知を郵送したが、通知が到達しなかったものを計上している。

 所有者不明の土地は昔からあったが、11年の東日本大震災の影響が大きかったという。

「速やかに復興事業をする必要があり、津波対策で高台移転がテーマになっていた」と話すのは、所有者不明土地問題研究会の報告書とりまとめに公共用地補償機構専務理事としてかかわり、現在は行政書士の門間勝さん。山林も含めて公共用地を取得し、復興道路なども早くつくる必要があったが、山間部の土地は何代も相続登記されていなかったという。

 門間さんによれば、所有者を調べると、相続人が海外にいるなどのケースも多かった。復興事業は「工事を早くしないといけない」(門間さん)とのジレンマがある。一方、国民の間では登記が必要との意識が希薄で、早く手を打つ必要があることを再確認し、相続登記の義務化が実現したと門間さんは解説する。

 所有者不明の土地問題は「行政が介入して気づいた」と話すのは日本土地家屋調査士会連合会の中山敬一理事。所有者不明の土地問題について、中山さんは「所有者不明でなく、所有者の所在が不明」という。登記簿から所有者をたどれないのは行政資料の限界もあると指摘する。具体的には、住民票や戸籍の関連資料の保管期限が短かったという。

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