
この事件を筆者に教えてくれた上海在住の中国人・Aさんが、この衝突の背景を詳しく話す。
「もともとこのマンションは『人材マンション』で、優秀な人材を上海に呼んで働いてもらうために作った建物なんです。一方で、実は『また貸し』をされていたり、いろいろなルートで関係のない住民も借りて住んでいることもあったようで、今回の抗議の背景には、一度部屋から追い出されたら、二度と戻れないのではないかという不安もあったようです」
このマンションがある張江鎮エリアは筆者も5年前に訪れたことがある。上海中心部を少し外れた比較的開発が最近進んだ場所だが、周囲に大型商業施設などはなく、大学のキャンパスが集まっていた印象が強い。Aさんは今回の政府や衛生当局の対応の悪さをこう指摘する。
「そもそも隔離施設となる場所は防疫法で決まっていて、住民の住むようなマンションを対象にすることはありえない。本来は法律違反であって、やり方が横暴です」
ただ、日々2万人弱の新規感染者が出ている上海では、隔離収容施設が追いつかないのだろう。上海の隔離施設と思われる動画や写真も出回っているが、工場のような広い空間に無数のベッドが所狭しと並んでいて、まるで野戦病院のようだ。最近では、どう見てもオフィスビルのような場所を隔離施設としている写真も出回っている。
このマンションが強制徴用された背景については、Aさんは「運営会社の大本の会社が国営だから、このマンションが選ばれたのではないかと言われています」と話す。それが事実なら、他の国営不動産会社系列のマンションも、突然、隔離施設として徴用されるリスクがあることになる。
張江鎮エリアのマンションでの騒動は、14日以降、まったく情報が出なくなった。恐らく警察に完全鎮圧されたのだろう。Aさんはため息をつきながらこう話す。
「本当に今回の政府のやり方にはあきれました。国際都市である上海でこんなことが起こるなんて……。何十年も前の中国に戻ったみたいですよ」