■ロックダウンが与えた負の影響
現在は徐々に封鎖解除となったエリアも出てきてはいるが、まだ多くのエリアで市民は不自由な生活を強いられている。約1カ月にもわたるロックダウンで、上海に住む人々が受けた心理的ダメージは計り知れない。長年、上海に住む日本人のBさんは、疲れた様子で今回のロックダウンの厳しさを語る。
「私は嘉定区という郊外のマンションに住んでいますが、郊外にある区だと食料の配給も遅い。幸い、うちはまだアプリや住民同士のつながりで、日用品や食料を手に入れることができていますが、スマホを使いこなせない高齢者の方や、家族の多い方はかなり大変です」
そして、精神的なストレスは市民の命にも影響が出る可能性がある、と続ける。
「日々、グループチャットなどにショッキングな映像が流れてきて、それを目にするとこちらもきつくなります。この前、うちのエリアに住む人たちのグループチャットで、手首を切って血が滴る動画を共有されたのですが、若い女性がうつ病を患っていることと薬がもう無いということを動画の中で話していました……彼女の今の状況が心配です」
現在、上海市政府の対応の悪さを批判する投稿や、ロックダウンの内情を示す動画や写真、文章は、当局に次々と強制削除されている。内部で何が起こっているのか、私たちは注視していく必要がある。(吉田博史)