コバルトブルーの瓦屋根に、白い塗り壁、黒いアイアン柵のバルコニーという特徴的なマンションを見たことはないだろうか? ヴィンテージマンションの代表格「秀和レジデンス」が、ある書籍がきっかけでネットで注目を集めている。
* * *
秀和レジデンスシリーズの第1棟「秀和青山レジデンス」が誕生したのは、東京オリンピック開催の1964年のこと。56年後の2020年、「秀和青山レジデンス」は老朽化で建て替えが決まった。これを機に、秀和レジデンスを網羅した『秀和レジデンス図鑑』(トゥーヴァージンズ)の制作が始まり、今年2月に刊行された。
かねて建築好きを中心に“秀和マニア”は存在していたが、本書の発売直後から、棟ごとに塗り方が異なる壁の模様や、タイルの配置などのマニアックな内容がネット上で反響を呼び、1週間後には重版が決定した。
「秀和レジデンスは64年から00年に建設され、東京を中心に北海道から福岡まで134棟が現存しています。特に都内でよく見かけるので、『気になっていたけど、詳細は知らない』といった人が多いはず。だから、SNSで反響があったのでは」(トゥーヴァージンズの浅見英治さん)
著者は不動産・リノベーション会社の代表で、情報サイト「秀和レジデンスマニア」運営の谷島香奈子さんと、秀和愛好家でほぼすべての秀和レジデンスを見て歩いたhacoさん。hacoさんは、秀和レジデンスの魅力についてこう語る。
「一見同じようでいて、よく見ると壁の模様やタイルの柄、金物の形状などさまざま。コストと機能性が優先されがちな最近のマンションとは違い、こだわりを持って造られているのが魅力です」
谷島さんは、不動産のプロとして、立地や管理状態の良さなどを挙げる。
「秀和レジデンスでは理事長や住民が秀和の建物の魅力を受け継ぐために努力しているのが印象的。今なら費用や手間がかかりすぎて再現が難しい遊びの部分の贅沢さや心地よさがあります。秀和レジデンスは、『マンションを買うなら管理を買え』というキャッチフレーズで、日本ではじめて管理組合が導入されたのですが、今も管理がしっかりしている棟が多いです。都心で立地のいい場所にあるのも魅力的です」