米メディアは4月9日、ロシアはウクライナ作戦の司令官に南部軍管区司令官A・ドゥボルニコフ大将を任命したと報じた。本来なら戦争を始める前に司令官を決め、陸、海、航空宇宙など全軍が連携して計画を練る。だが今回の侵攻は「特別軍事作戦」で、演習に集めた部隊を越境させ、威嚇で抑え込むつもりだったのか、燃料、実弾などの準備も乏しく、60キロもの大縦隊が路上で停止する事態が起きた。真剣に侵攻するなら開戦と同時に全力で航空攻撃を加えてから突入するのが定石だろうが、当初は航空攻撃が奇妙に少なく、最近になって増えた。
ロシア陸軍はソ連解体時に140万人だったが現在28万人(陸上自衛隊の2倍)で、空挺(くうてい)軍4万5千人、海軍歩兵3万5千人を加えても地上兵力は36万人だ。東シベリアと極東700万平方キロを担当する東部軍管区の総人員は8万人(自衛隊の3分の1)にすぎず、一部はウクライナに投入されている。ロシアは徴兵制で1年の兵役を終えた予備兵を名目上200万人持つが、就職している社会人を召集するのは余程の場合で、シリア人などの傭兵(ようへい)で補充中だ。
ロシア軍はマリウポリを制圧し、東南部の分離派支配地域を確保した後、キーウや西部地域に進撃すれば自軍の死傷者がさらに増大するからもっぱら航空機・ミサイル攻撃でウクライナの都市や工場、運輸施設を破壊し屈服させる戦略に出ている。
ウクライナ空軍は無きに等しく、携帯対空ミサイル「スティンガー」は射程、射高が4キロ程度で、低空飛行する攻撃機やヘリコプターには有効だが遠距離から空対地ミサイルを発射する爆撃機には対処できない。ウクライナが大型、長射程の対空ミサイルを多数入手できるか否かが戦局を左右する「ミサイル戦争」の様相を呈しつつある。
(編集部・古田真梨子)
※AERA 2022年5月2日号-9日合併号