Ayase/1994年生まれ、山口県出身。コンポーザー(撮影/写真映像部・東川哲也)
Ayase/1994年生まれ、山口県出身。コンポーザー(撮影/写真映像部・東川哲也)

■聴き流されない違和感

Ayase:『君たちはどう生きるか』は5年ぐらい前、バンドをやっていた時期に父から送られてきた本です。当時、ライフラインが全部止まる程お金がなくて、恥ずかしながら親に借金もしていました。人生における人とのつながりの話で、それ自体も面白かったんですが、父が自分の気持ちを言葉で伝えるのではなく本を通して伝えてきたことがアツかった。今でも読み返すと、当時のことを思い出して勇気づけられます。

『ギャシュリークラムのちびっ子たち』はエドワード・ゴーリーの絵本で、A~Zまでの名前の付いた子どもたちが順に死んでいく。残酷な物語ですが、コミカルな一文が添えられていて、強烈な畏怖を感じるなと。鮮烈な印象はよくも悪くも記憶に残る。僕は音楽を作る上で、さらっと聴き流されないように何か引っかかりになる違和感を入れることを意識していて、エドワード・ゴーリーの絵にも近いものを感じています。

『スーパーベイビー』は、本出身のヤマンバギャルが東京・町田に出てきて、黒ギャルに転身してアパレル店員をやる少女漫画です。主人公の黒ギャルが、僕が知っている人間の中で最高なんです。ポジティブで、周りのことが見えている。登場人物みんな生活は苦しいんですが、主人公のちょっとした言葉でみんながハッピーになって人生が変わっていく。その突き抜けた明るさに力をもらって、読み終わった後、「曲を作りたい」という気持ちが湧いてきました。

(構成/ライター・小松香里)

AERA 2022年5月2-9日合併号より抜粋