ロシア軍はウクライナ東部や南部に攻勢をかけ、南部のミコライウでもビルが破壊されている(写真:Getty
ロシア軍はウクライナ東部や南部に攻勢をかけ、南部のミコライウでもビルが破壊されている(写真:Getty Images)
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 長期化が懸念されるウクライナ侵攻。ロシア側は「軍事作戦は第2段階に入った」としてている。北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターの宇山智彦教授に話を聞いた。AERA 2022年5月16日号の記事を紹介する。

【地図】ロシア軍が侵攻した地域と撤退した地域

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 ロシア軍はウクライナ侵攻の目標の一つとして、親ロシア派支配地域があるドネツク、ルハンスク両州の完全支配を掲げている。だが、首都キーウ周辺の部隊を撤退させて東部戦線に再投入したのにもかかわらず、一進一退の攻防が続く。英国のウォレス国防相は4月28日、ロシアが今回の侵攻を「特別軍事作戦」から「戦争状態を宣言」する可能性に言及。戦いがさらに激化する恐れが出ている。宇山智彦教授は次のように分析する。

「ロシアが主導する旧ソ連6カ国の軍事同盟『集団安全保障条約機構(CSTO)』で、いまはベラルーシが戦争に協力しているのみですが、今後本格的に『戦争』となると、これらの国に協力や参戦を迫っていく可能性もあります」

 また、ロシア側は4月22日、「軍事作戦は第2段階に入った」とし、ウクライナに次ぐ標的として旧ソ連構成国のモルドバを示唆した。ウクライナと国境を接するモルドバ東部には事実上の独立を宣言している「沿ドニエストル共和国」があり、ロシア軍が駐留している。

AERA 2022年5月16日号より
AERA 2022年5月16日号より

NATOと戦争の危険

「ロシアはウクライナ南部を全面的に掌握することは難しそうですが、黒海からオデーサ州の西側の通路を確保すれば、いつでもモルドバに入れます。ロシアは、まずはそこを押さえる、と考えているかもしれません」

「モルドバはルーマニア系民族が多数を占め、ルーマニアは北大西洋条約機構(NATO)に加盟しています。この先、ロシアが総力戦に持ち込み、NATOと本格的な戦争になっていく危険もあるでしょう」

 戦争の長期化を懸念する声は日増しに高まる。

「プーチンは08年のジョージア(グルジア)との戦争で(同国内の)アブハジアと南オセチアの独立を承認したり、ウクライナの親ロシア派支配地域にドネツク、ルハンスクという二つの『人民共和国』を作って侵攻直前に独立を承認したりしてきた。しかし、それで満足するわけではない。最終的に『ソ連のような強い国をもう一度作る』ことが彼の目標であるはずですが、それがすぐにはできないから、できる範囲のことをやるためにずるずるといろんな仕掛けを作り出していきます」

 そしてプーチンは、独ソ戦に勝利したスターリンに自分を重ね合わせている面もあるのでは、と宇山さんは見る。

「スターリンも大祖国戦争の最初の段階ではナチスドイツに一気に攻め込まれ、苦戦しました。しかし、はね返して国内で権威を再び高めることになった。同じくいまは苦戦しているプーチンも、その展開を望み、狙っている可能性はあると思います」

(構成/編集部・小長光哲郎)

AERA 2022年5月16日号から抜粋