AERA 2022年5月23日号より
AERA 2022年5月23日号より

「今日、数学の教科書に至るまで政治的な視点を持ち込んで禁止しようとする政治家があまりにもたくさんいる。自分の政治思想に合わないというだけで、教科書が禁止されたり燃やされたりすることなんて、考えたことがあるか」(バイデン氏)

 教育現場での「文化戦争」にまで発展してきた保守派の政治的な猛攻撃に、初めて言及した。

 民主党員やリベラル派は、保守派市民や政治家のあからさまな人種・性・性的少数派差別について、感情的にならないように努めてきた節がある。しかし、人工中絶が違法となる見込みの中で、それも変わろうとしている。最大の理由が、中間選挙でトランプ派が主流ではないという結果を見せることだ。そこに、伝統的な共和党支持者のトランプ政権の大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を務めたジョン・ボルトン氏らが加わり、まさに「国民投票」的な意味を帯びてきた。

■激しいインフレ率の上昇、税金の大幅カットは魅力的

 米経済の行方も、中間選挙の争点となりそうだ。インフレ率の上昇が激しい最中、米連邦準備制度理事会(FRB)は4日、22年ぶりとなる0.5%の大幅利上げを決定。同時に金融資産の圧縮に乗り出し、インフレを抑え込む姿勢をみせた。

 ロシアによるウクライナ侵攻がいつ終わるのか見通しは不透明で、米国の支援支出は膨らんでいる。また、原油価格も高止まりし、3月の消費者物価指数は約40年ぶりの高水準と、市民の懐を直撃。ニューヨーク市内のレストランに行くと、メニューの価格には全てテープが貼られて書き換えられ、値上げされているのを見る。ダンキンドーナツのコーヒーの価格は以前の2倍となり、高騰は容赦ない。バイデン政権は、米経済は堅調、失業率が低水準にとどまり多くの雇用を創出していると主張するが、インフレの解決にはならない。

 その中で、トランプ派支持者が主張する小さな政府、つまり税金の大幅カットは魅力的に聞こえる。トランプ氏の推薦を受けて、オハイオ州の共和党上院議員候補を選ぶ予備選挙で勝利したJ・D・バンス氏(37)の公約の一つでもある。

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