グラフ【2】/AERA 2022年5月23日号より

「インフレに強いという観点からはもちろん、円安・ドル高に対するリスクヘッジ(危険回避)の側面から、資産の一部を米国株に投じるのも一考でしょう」

 変動性の高さとは、いわば“両刃の剣”である。魅力を感じたとしても、商品やゴールドへの投入はごく一部の資金にとどめ、むやみに高いリスクを取らないのが肝心だ。そのスタンスに徹すれば、ポートフォリオ内の“ダークホース的存在”として妙味がある。金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎さんが言う。

「本来、急激な金融引き締めはやってはならないこと。コロナ禍でドルをばらまきすぎたので、回収を急いでいるのが今のFRB(米連邦準備制度理事会)です。株式市場などへのインパクトは未知数で、その意味ではドルにも弱点が潜んでいます。ゴールドはインフレに強い実物資産であると同時に、世界共通の価値を有する無国籍通貨です。円からはもちろん、ドルからの避難先としても、ゴールドが脚光を浴びる可能性があります」

金には上値余地あり

 ゴールドと言えば、すでにかなりの上昇を遂げたという印象を抱くかもしれない。もっとも、それは国内価格(円建て)の話だ。世界的な取引価格であるドル建て価格を円に換算すると、円安が進んだ分が上乗せされる結果となり、国内価格は史上最高値を何度も更新した。

「世界的にインフレはなかなか収束しないはずですし、ロシアへの経済制裁を機に、世界的なサプライチェーン(エネルギー資源などの調達網)の再構築が求められています。こうした情勢を踏まえれば、ドル建て価格も史上最高値を更新する可能性が高いでしょう」(亀井さん)

 亀井さんによれば、第2次オイルショック直後の80年につけた1トロイオンス850ドルの高値は、その後の物価変動を踏まえた実質的な価値に換算すると約2800ドルに相当する。「現在2千ドルを切っているドル建て価格には、まだまだ上値余地があります」(同)

 さて、重見さんの検証では最も安定的なリターンを達成していた米国リートの話が、すっかり後回しになってしまった。

 日本国内の投資家が比較的気軽に資金を投じられるのは、米国リートのインデックス(市場全体の平均的な動き)に連動するETF(上場投資信託)や投資信託だろう。投資経験を踏まえた人なら、過去の実績などを参考に、より有望な米国リートの個別銘柄を厳選して運用するアクティブ型のファンドを選ぶのも手だ。(金融ジャーナリスト・大西洋平)

AERA 2022年5月23日号より抜粋

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