TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。映画『世界を動かした女たち』について。
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ヘレン・レディの「アイ・アム・ウーマン」が全米チャート1位となったのが1972年。女性解放運動の中で生まれた雑誌「Ms.」もこの年の創刊である。伝説的フェミニスト、グロリア・スタイネムが編集長だったが、彼女をモデルにした『グロリアス 世界を動かした女たち』を観て、鮮烈で自由なヒッピー文化に心が震えた。
ともにアカデミー賞女優のジュリアン・ムーアとアリシア・ヴィキャンデルがWキャストで、ジェンダーの壁を突き崩し、女性の地平を拓いた半生を見事に演じていた。
「これはラブ・ストーリーなの」とジュリー・テイモア監督。「ラブといっても恋愛ではなく、女同士の愛情と友情の物語」
『フリーダ』『アクロス・ザ・ユニバース』を世に出した監督は「フェミニズム以外に人種問題もあった。そんな時代に、黒人、先住民、白人の女性が垣根なく一緒に闘った。これこそ映画にすべきだと私は思った」
1台のバスに主人公が乗っているシーンが随所に現れる。同じ車内に主人公が複数。幼少期、少女期、20~30代、40代以降の各世代が乗り合わせ、会話し、過去・現在・未来の自分が勝利への道筋を語りあう。
「原作では時系列を追い、出だしと終わりが書かれていた。でも映画はそれとは違う構図を考えた」と語る監督は日本で知った版画に触発されたと言うが、それは曼荼羅(まんだら)絵図のことだろう。
曼荼羅の起源はインドだ。本作では、まだ若く柔らかな感性を持つ主人公が一人で彼の地に赴く。「この映画ではインドが重要な意味を持っている。男女差別やカースト制に悩む中、車座になってアイデアを持ち寄り、解決法を探る現地の女性たちを知って若き主人公は連帯と草の根的な運動の大切さを学んでいった」
当時、若者にとってインドは発想の源泉だった。