元東京地検の落合洋司弁護士は、

「田口容疑者の逮捕容疑、電子計算機使用詐欺という罪名自体が成立するのかと考えていた。おそらく、警察、検察は罪名より逮捕でプレッシャーをかけ、返金を最優先したのではないか」

 とみる。そして、大半が返金されることを踏まえ、

「起訴前に4630万円に近い返金があれば、田口容疑者は起訴されずに処分保留で釈放されるかもしれない。財産犯なので、金銭的な被害が回復されることが最も優先される。起訴後に返金があった場合でも、裁判では執行猶予が付いて、刑務所に入らなくてもよいという判決になるのではないか。この事件は、田口容疑者が金を盗んだのではなく、阿武町の誤入金が端緒なので、裁判になるとかなり量刑には考慮されます。もし、今の電子計算機使用詐欺という罪名のまま検察が起訴すると、裁判では無罪になる可能性が十分にある」

 と話す。

 花田町長は、4630万円の9割ほどが「確保」できたことで、

「大半のお金が確保でき、若干、安心しています。しかし、すべて回収できていないので、今後も努力します。(4630万円が)どう流れ、使われたかは、できるだけ解明したい。警察が一定程度やると思うので、町民には説明をしたい」と記者会見で心境を明かした。

 しかし、花田町長ら阿武町は、安心できる状況ではなさそうだ。

「役場には、誤入金したこと自体に責任があるという内容の電話がたくさんきています。今後、住民監査請求や訴訟などになると、ますます厳しい状況になります。もう被害者という言い訳が通じなくなる。職員が被害弁済を求められる可能性もあり、花田町長の責任問題で辞職にも発展しかねない。すでに、次の町長が誰か、7月の参院選と同日のダブル選挙にして新しい町長を選ぶべきだとの声も上がっています」(阿武町議会関係者)

 カネが戻ってきたとしても、それでおしまいというわけにはいかないようだ。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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