「全額をインターネットカジノに使った」わけではなかった。山口県阿武町の4630万円誤入金問題。5月24日、町は4299万円を確保したと発表した。急展開で返金のめどがついた背景に何があったのか? ネットカジノとの関係は? それぞれ探った。
「このニュースを聞いてやっぱりだと思った。4630万円も一気にネットカジノに使うだけの度胸はないですよ」
そう話すのは、電子計算機使用詐欺容疑で逮捕された無職田口翔容疑者(24)の幼なじみだ。
当初、田口容疑者は「すべて海外のネットカジノで使った」と弁護士らに説明していた。
しかし、この日、花田憲彦町長とともに記者会見した町側の代理人、中山修身弁護士は、
「田口容疑者が送金した決済代行業者3社に対し、国税徴収法に基づいて差し押さえなどの手続きを進めました。具体的には5月19日に東京にある3社に書面を直接手渡したところ、直後に阿武町の銀行口座に送金してきたようです。それを阿武町が確認したのが23日。まだ他の手続きが完了していないので、返金というより確保という言葉になります」
と説明した。
田口容疑者がネットカジノに使うために送金したとみられる決済代行業者。ネットカジノとどういう関係があるのだろうか。
関西地方でネットカジノ関連の仕事をしているある男性に話を聞くと、仕組みはこうだ。
ネットカジノは、サーバーが海外にあり、いったん決済代行業者にカネを預けてポイントに交換し、それを使ってカジノで賭けることができる。
「決済代行業者は、初回の客などにはポイントを多くつけて、囲いこもうとする。例えば、100万円を業者に預けると通常なら100ポイントのところ、150ポイントくらい、つまり50%上乗せして交換する。業者も競争なので、ポイントをどれくらいつけるかはそれぞれ」
業者は損はしないのだろうか。
「決済代行業者は、サーバーのあるフィリピンなどの、胴元となるネットカジノ業者に登録しており、ポイントを数億円、それ以上の単位で大量に買い付ける。そういう単位で取引し、信用ができれば、相当多くのポイントを上乗せして交換してもらえるようになる。例えば1億円を胴元に払うと、5億ポイントもらえるという感じ。だから、客にポイントを50%程度還元してももうかる仕組みになっている」