松本さんに質問した学生たち。会場には約550人が詰めかけた(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
松本さんに質問した学生たち。会場には約550人が詰めかけた(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)

松本 昔、優れた人がいっぱいいたわけだから、それに影響されるのは当たり前。同時代を生きてる人にも影響されるし、仲間にも影響されるし、おそれることじゃない。ただし、インプットしたものを直接出しちゃダメ。ひとひねり、もしくはふたひねり加えて、そのひねり方で自分のものにしていけば。

 Q 「ガラスの林檎」(松田聖子、83年)でリンゴにあえて漢字を使ったり、はっぴいえんどの「風をあつめて」(71年)では、あえて平仮名を使われている印象もあります。どういうバランスの美意識でしょうか?

 松本 気分です(会場爆笑)。もうひとつはね、たかが歌詞ですから。大出版社が出す本はすごい添削が入るわけです。プロが目を通して、誤字がないように直していくよね。(こちらは)たかがレコードの歌詞で、見る人も「素人」、レコード会社の社員ですから厳密ではない。間違いは少ないように心がけてはいますけど。

 Q テレビでスマホのメモ帳で歌詞を書いているとおっしゃっていました。

松本 スマホはすごい発明で、まずメモに入れちゃうんですよ、曲を。再生できますから、その下に詞も書ける。メモひとつあれば、ほかのアプリはいらないです。僕は新幹線でいくつも詞を書いてる。

 宇賀なつみ 「(歌詞が)もう出てこない」みたいなことないんですか?

 松本 年中だよ。この間は半年かかったし。

 Q 「瑠璃色の地球」(松田聖子、86年)では目線がどんどん引いていくというか、規模がどんどん大きくなっていきます。目線の動きにどういうこだわりがありますか?

 松本 無意識でやってますね。「瑠璃色の地球」の場合、狭い空間で手のアップぐらいから始まって、真っ暗闇のなかでカップルがいて、そこから引いていくと、灯台が次に出る。明るくなる。サビにいくと、朝陽が水平線から昇ってきて、全体に光が放たれて完全に明るくなる。サビの部分の雄大さが、よくできたなと思ってます。

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