■ミュージカル俳優が忙しい理由
テレビに進出してからは、音楽番組に出演することも多かった。「題名のない音楽会」の司会も、今年の4月で5周年を迎えた。中学生のとき、「好きな音楽をやって生きていけたらどんなにいいだろう」と夢想した夢は、想像を超えた広がりを見せている。
「『題名のない音楽会』は、自分がずっと携わってきた音楽の世界を紹介する番組ということでお引き受けしてたんですが、それまで見たこともないような楽器や音楽に触れて、そのパフォーマンスを間近で見ることもできる。とても刺激的ですし、自分の引き出しも増えていく。僕の場合、『これがしたい』と思って手を伸ばすのではなく、流れに身を委ねてきて、その流れが枝分かれする先々に、チャンスが待っている。どうやらそういう人生みたいです(笑)」
とはいえ、舞台俳優は忙しい。稽古は1カ月以上。本番が地方公演も含めて2カ月なんてことはザラだ。石丸さんの場合は、テレビの収録もあり、一年のうちには何本か映像作品やストレートプレイにも出演し、コンサートも開催したりする。
「僕がいろんな仕事を引き受けて活動している理由は、第一に、ミュージカルをもっともっと広めたいからです。日本では、まだまだミュージカルというのは一般的ではないので、テレビに出て、顔を知ってもらって、興味を持ってもらい、お客さんに劇場まで足を運んでもらう。そういう使命を感じているせいか、結果、忙しくなっちゃうんですよね(笑)」
健康法を訊ねると、「作品に見合った体づくりをしなければいけないので、そのつど違います」。今は、夏から始まる舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」のために、ダイエットに励んでいる。
「少し体を絞って、筋肉質にしておこうと。パンとかご飯、糖質は減らして暮らしています」
何でもスマートにやってのける姿は、「Mr.パーフェクト」のようにも見える。失敗して慌てたエピソードなどはないのだろうか?
「最近の衝動買いでいえば、『題名のない音楽会』にMattくんが出てくださったとき、黒いサックスを持ってきたんです。それを見たら、めちゃくちゃ欲しくなって(笑)。同じものは日本に2本しかないと聞いたのでそれは諦めて、別の黒いサックスを買ってしまいました。自分に投資することは悪いことじゃない。素敵なものを見つけたら手に入れるのも人生の大事な楽しみの一つかなと思っています」
>>【前編】石丸幹二が俳優になった理由「つまずいたら次へ。妥協も目移りも」
(菊地陽子 構成/長沢明)
※週刊朝日 2022年6月10日号より抜粋