■迅速診断の必要性
Q:今後、新型コロナウイルスは、インフルエンザのようになっていくのでしょうか?
尾崎:インフルエンザと同じようになるのには、いくつか条件があると思います。一つは、インフルエンザのように、医療機関で迅速診断ができるようになることです。もう一つは、経口薬の選択肢が複数でき、患者さんが診断後に経口薬を処方してもらい、自宅で療養できるようになることです。
「抗原定性検査」は、体内の新型コロナウイルスのたんぱく質の有無を調べて感染の有無を判断します。5~30分で、その場で結果がわかります。国が「体外診断医薬品」として承認した検査キットを使えば、それで診断できます。
経口薬は、いま緊急使用が認められている2種類は、重症化リスクのある人にしか使えないほか、使えない人もいるので、もう少し、選択肢が増えると、インフルエンザに近づくのではないでしょうか。
■全数報告をやめる前に
Q:感染症法上の位置づけもインフルエンザと同じ5類になるのでしょうか?
尾崎:5類にする前に、検討すべきことがあります。現状では、感染者は全数報告することになっているので、流行状況が把握できています。また、重症者や中等症の感染者の人数も把握できています。しかし、5類になると、それができなくなります。
インフルエンザは定点観測と言って、全国の決まった医療機関で、1週間当たり何人の感染者がいたかをモニターすることで、地域や全国の流行状況を推計しています。インフルエンザは歴史があるので、こういったことができるのですが、新型コロナウイルスはまだ新しい感染症なので、全数報告をやめた場合に、どうすれば流行状況を把握できるかといった検討が必要です。
(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)
※AERAオンライン限定記事