この仕事をしているからというわけではなく、やはり文化・芸術は、人を育て、人間としての心の豊かさを育てることの一つでもあると思いますし、「人が育つ」ということは「国が育つ」ということでもあります。いまは、さまざまな形で文化や芸術を世界に配信することができる時代だと思うので、世界のなかでも称賛されるような日本の文化をこれからもつくっていかなければと思いますし、改めてそうしたことを考えていくこともはとても大切なことだと感じています。
――とはいえ、アマチュア交響楽団の主宰である理子が、行政の担当者に助成金の申請について詰め寄るシーンは、あくまでコミカルに描かれ、笑いを誘う。
檀 カンニング竹山さん演じるお役所の担当者の表情を見て、「全然通じていないな」と実感することができたので、「これだからいけない」という気持ちにもなりました(笑)。
水谷 面白いですね(笑)。今回はそういうことを、重くなく表現したいという思いが根底にありました。れいさん演じる理子さんの「あなたロボットなの?」というセリフの言い方、とてもすてきでした。
檀 監督も、カンニング竹山さんには「無感情で」とおっしゃっていましたね。
水谷 そうですね、「感情を入れないでください」と。
檀 「死んだような目でお願いします」とおっしゃっていたのが印象的でした(笑)。
――水谷さんは、監督としてだけでなく、俳優としても重要な役どころを演じている。“監督兼俳優”の水谷さんは、檀さんの目にどのように映ったのか。
檀 水谷監督は、撮影に入る前から、「れいさん、僕ね、監督していてもすごく動き回りますからびっくりしないでくださいね」とおっしゃっていたんです。ディレクターズチェアに座りモニターを見ながら考えている、というのが私の持つ一般的な「監督」のイメージだったのですが、水谷監督は誰よりも動き、誰よりも笑顔でいらっしゃったので、本当に楽しい現場でした。
隅々まで目を配り、若いスタッフ一人ひとりに「おはよう」と声をかけ、そこから一日が始まる。「水谷監督のつくる映画のために自分はどれだけのことができるだろうか」という意識で頑張っていたように思います。それほど、共演者もスタッフもみんな、監督の魅力に引き込まれていたように感じました。