インタビューの最後、経験を積んで得られたものについて聞くと、内野さんは、「自分の失敗から積み上げられたノウハウみたいなものは、少なからずあると思います」とつぶやいた。そこで、“経験”ではなくあえて“失敗”という言葉をチョイスしたのが内野さんらしい。
「今回も、演出の日澤(雄介)さんに言われたんです。『内野さんは、一見、オス要素が強い人のように思えるけれど、それは内野さんの鎧であって、絶対に弱くて繊細なところを持っているはずだ。その鎧を破ったら面白いものが出てくるはず』と。内心、『当たり!』と思いました(笑)。人間というのは、追い詰められることで、思いもよらなかった違う場所に連れていかれることがあります。役者をやっている上での一番の快楽は、新しい監督さんや演出家の方と出会って、自分の殻や鎧をバキッて割ってもらった瞬間なんです」
>>【前編】内野聖陽、芝居も“熟成”で奥ゆきを 「想像の余白を残す芝居がしたい」
(菊地陽子、構成/長沢明)
※週刊朝日 2022年6月17日号より抜粋